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門之倉 樟
門之倉 樟
novelistID. 45405
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バカが全裸でやってくる―安達としまむら記念―

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いつになっても、自分の小説の発売日というものにはわくわくする。これに関しては小説家として活動するならずっと続いていくだろう。
 目の前に師匠様の玄関がある。ドアノブに手をかけようとしたとき、急にドアから開いてきた。
「今日あなたが来るのは予想済みです。一体何年、あなたの師匠をやっていると思っているのですか」
 急に開いた玄関を見て、驚いている様子を見た甲斐抄子が言ってきた。どうやって、このタイミングで開けられたんだろう。まさか、今日の早朝からずっと玄関で張り付いていたとか。もしくは、発信機とかの類を付けられていて常に僕の位置がわかるようになっている。どっちもありえそうでこわい。うへぇー。
「今日は私の新刊も出ますし、弟子がどうしてもと懇願するので、やさしい師匠は付き合うことにします」
 そう言って、彼女は玄関を閉めて部屋へと戻っていった。相変わらず、徹夜で充血した目だ。まぶたもとても重そう。僕もだけど。
 けど、やさしい師匠様は勝手に弟子の家にあがりこまないと思う。そして弟子の5周年に銀の皿をおごるはずだ。
 そんなことを考えていたら、すぐに戸が開いて出てきた。わずか数分。来るのがわかっていたようだし、あらかじめ準備をしておいたんだろう。二人で黙々と歩き始める。
 3月10日。今年、初めての僕の新刊がでる。雑誌で連載していたものに、書き下ろしを加えたものだ。去年の11月以来だから、約4か月ぶりだ。彼女も、今日が今年の初新刊である。また僕は2ヶ月後には完全新作がでる。
 2年前に僕の書いた小説家の物語が漫画化され、今年の1月に最終巻が出た。その本にも書いたが、この漫画化によって原作1巻の重版がかかったのは嬉しかった。そのときは隣にいるこいつも、棒読みで、「わー、おめでとー」と祝ったあと、自分の作品の自慢をして帰った。
 ちなみに、今年も卒業できずに二人とも大学生作家を続行中だ。うれしくねぇー。坂を上るがつらいと言い訳しておこう。
「ところで、あなたはいつになったら私のライバルになるんですか。かれこれデビューして6年ですよ」
「6年だから、まだ4ヶ月しか経っていないじゃない。だから、まだまだきみとの差はあるよ」
「いつあなたが赤髪のバスケットマンになったんですか。それなら、さっさと5ファールで退場してください」
「きみの師匠はテクニカル・ファウルで退場したね」
 蹴ってきた。痛い。審判、ファウルをとってくれ。と、こんなバカをやっていたら、目的地である本屋の前に着いていた。
 僕たちはすぐさまライトノベルのコーナーに向かい、書店に積み上げられている自分の新刊を手に取る。同じように彼女も自分の新刊を手に取る。本の表紙を見つめ、願いを込める。どうかこの本が売れますように、と。
 そして、僕は彼女の新作が置かれている場所に置こうとする。彼女も同じように僕の新作の上に置こうとしたので、お互いに手が止まり睨み合う。
「弟子は師を崇め奉るものです。ですから、師の邪魔をしてはいけません」
「師だったら、少しは弟子に譲るものだ。今までさんざん売れてきたんだから、ここでの工作の一つぐらいいいだろ」
「それで私の本が売れなくなったらどうするんですか。責任とってもらいますよ」
 きみの本はこんな些細な工作でうれなくなるものなのか。こんなのが師匠じゃ先が知れている。
 しばらくはそのまま睨み合っていたが、やがて諦めたかのように互いの手に取っていた本を元の場所に戻した。
「ではこれからあなたの家にいきますよ。そこでささやかなパーティーです。帰ったら即刻、銀の皿に電話してください。もちろんあなたのお奢りで」
「なんのパーティー?」
「私とあなたの小説が売れるように。また、今年で私もデビューから9、いや10? 8? ぐらいですから」
 そのセリフ、似たようなものを去年に聞いたきがするな。相変わらず自分勝手にやるやつだ。
 けど――その願掛けには賛成だ。願わくはこの本が、いや5月の新刊が売れますように。今年こそ甲斐抄子に負けないぐらいの有名作家になれますように。いつまでも、こいつに師匠面されてたまるか。
 その、切っ掛けの本になりますように。