泣き虫サーモン
思慕も猜疑も敬愛も傷心も、貴女への感情全てが綯交ぜになって流れていく
あまり叶えるつもりのない恋だった筈の想いはこんなにも重苦しい
苦痛が甘やかな感情を押し潰して、流れる涙に愛した貴女の姿さえ滲む
雪に溶けるように、白い羽根が誰のものなのかすら分からなくなりそうだった
まだ手を伸ばせば届くだろうに
白夜の中でチリチリと照り返して煌く、指先に触れる冷たい白は雪なのか羽根なのか
「好きよ」
本当だと信じられたらどんなに良かったか
また裏切られると怯えたまま貴女を受け入れられない
流れる前の感情が頭の中でぐるぐると回る
結局のところ俺はまだ貴女から抜け出せていない
胸が痛んで仕方ない、恋心にかける麻酔なんてなかった
「私を幸せにできるのは貴方だけよ」
たとえ歪んでいたとしてもそれなら構わなかった
裏切られることより見捨てられることの方が余程に怖い
鮭の塩味が少し辛かった
涙味にそのまま溺れてしまいたいのに
不意に見上げた空に白い羽根が浮かんで、瞬きのうちに消えていく
「 」
そんな簡単な言葉さえ、もう俺は貴女に伝えられない
――死んでしまえば良い、今すぐに
貴女の言う「好き」が本当だったならどんなに幸せか
それでも嘘であって欲しいと願ってしまうのは
空に戻れない俺がどう足掻いたところで
届かない空にいる貴女を想って泣くしかできないからだ
心の淵に貴女がいて、傷が消えないように繰り返し爪を立てる
俺も忘れたくはないから貴女の望むままに、なくしかない