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門之倉 樟
門之倉 樟
novelistID. 45405
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銀の刻のコロナ―ホワイトデーの統果たち―

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 3月14日、ホワイトデーの当日。俺は放課後、広川、コロナと一緒に下校している。仁はこれから彼女と一緒に一日を過ごす自慢していた。
 今朝のホームルーム、先月のバレンタインでチョコを誰にも渡せなかった綾子先生は「先生に渡してもいいのよ。そして、結婚しましょう」と言っていた。当然ながら、そのような猛者はあらわれず、いつものように皆で慰めた。
 広川が一緒にいる理由は当然ある。俺はホワイトデーのお返しをするためだ。俺はクリームケーキにして、龍護寺のみんな、智明たちや竜一さんたち、それに論説部と広川を加えて一緒にケーキを食べようと計画した。そこで数日前から彼女に龍護寺でパーティーをしようと言って、来てもらっている。
 いっそのこと今までの感謝をこめてパーティーしようと思い、仁も誘ったのだが、彼女が許してくれなかったそうだ。次の機会にお礼をすることにした。
 
 龍護寺について、広川を居間に案内する。それから一言断って七枝美をさがす。すぐに見つかり、彼女に近づいた。用意したものを一応聞いておくためだ。弓那たちが話していた似た人物である八枝美の話、そして今まで龍護寺の支援を見るぶんには大丈夫だろうが、確認しておいて損はない。
 そのことを伝えると、彼女がある一つの部屋に案内してくれた。その部屋に広がっていた光景は圧巻だった。中央にそれは大きなケーキが置かれている。直径、50センチくらいはありそうだ。
 これなら、あの藍がいる限り今日中に終わりそうだ。それを見越してのものなので、なんとかなるだろう。
 時間を確認する。もうすぐでみんなが集まってくる。このサプライズの準備に取り掛かることにした。
 
 居間のほうを見ると、みんなが集まっていた。広川が知らない人だらけで、うまく打ち解けられるか心配だったが、遠目から見ているぶんには問題なさそうだ。彼女だけに心配は杞憂だったな。ちょっと前までぼっちだった俺に、笑顔で相手をしていた人だし。言っていて、ちょっとだけ悲しくなってきた。あれ、目から何か温かいものが。
 そこには当然ながら論説部もいる。そろそろいいだろう。今回の主役のケーキを持っていくことにした。
 両手でケーキと料理を持っていき、テーブルの中央に置く。料理のほうは七枝美のほうのサービスらしい。
それから個人用の皿とコップとペットボトルを置いた。藍がすぐにでも食べたそうに、うずうずとしている。また、彼女以外の論説部はしきりに見ていた。みんなが一通りコップにそそいだのを確認してから言う。
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。バレンタインのお返し、そして今までありがとう。これからもよろしくという意味をこめて、ささやかながらパーティーをしよう。みんな乾杯!」
『乾杯!』
 藍が待っていましたとばかりに、料理に飛びつく。負けじとミュリアルも手を付けた。それを論説部と、刻乃さんが抑える。
 そんな様子を広川も含めた他のみんなが笑いだす。ゆっくりと始まるこのパーティーは、どうやら楽しくなりそうだ。
 今月で刻乃さんと茜さんが学園を卒業する。つまり、俺たちに残された時間はあと1年だ。あと1年たてば、龍護寺のみんなと一緒に龍人の本能に支配されたコロナや赤の仲間を助けに行く旅に出る。
 どんなに過酷な旅になるのだろう。かつて戦った、コロナと赤が凄すぎて、ろくに想像もできない。ただ1つだけわかるのは、それが死と隣り合わせってだけだ。
 その旅が終わったとき、こうしてまた皆でパーティーができますように。もう誰も死なせない。守り切って見せる。そう強く決意した一日だった。