オサーン収容所にて
オサーンがオサーンらしくオサーンに過ごす場所である。
あまりにオサーンすぎる者達が、世間様にご迷惑をかけないように、隔離されて暮らしている。
俺も、その一人。
だが、オサーンの模範囚として、警備の任務についている。
たった一人の部下、谷やんを従えて。
「あー、なんかおもしれーことないかなー」
俺は、抜いた鼻毛をフッと飛ばしながら言う。
「何言ってんすか。あるわけないでしょ。」
谷やんはボクシング雑誌を読みながら、鼻クソをピッと飛ばす。
警備、と言っても暇なもの。
オサーンはオサーンらしく、ぐでぐでと暮らすものである。
「「あ~、つまんね~」」
二人同時に鼻から紫煙を吐き出した瞬間。
ビーッ ビーッ ビーッ
警報が慌ただしく鳴り響いた。
『脱走者1名、脱走者1名。総員戦闘配置、確保せよ!繰り返す…』
「…脱走者?」
俺は不思議そうに呟く。
オサーンはオサーンらしく暮らすもの…
そんな中で脱走とは…もしや!
俺は過去の記憶を蘇らせる。
『私…純潔を目指したいの…』
酒の席でそんなことをつぶやいた女がいた。
その時は、皆笑ってバカにしたもんだ。
しかし、俺はそいつの目が真実を語っているモノだということに気がついていた。
…あいつか!
「おい!」
ゴンッと谷やんの頭を足で小突く。
「いてっ!なんすか!」
振り返りながら、谷やんがギョッとするのがわかった。
「…え…その武装…」
「行くぞ。相手はただ者じゃない。下手したらヤられるぞ。」
「ちょ、待ってくださいよ!」
その谷やんの声を背中で聞きながら、俺は持ち場へ向かった。
俺の持ち場は最終ライン。
つまり、ここを突破されたら終わりだ。
望遠レンズで最前線の様子を見る。
ガンッとダクトが外れて出てくる女が見えた。
…やっぱりあいつだ…!
無駄なことを。
オサーンが純潔を目指すなど…!
最前線にはコードネーム、セクシーオサーンツインズが防衛しているはずだ。
こいつらも中々の強者。
そう簡単に突破されないだろう…と思ったら
ワイロを受け取って、早々に道を空けやがった!
「なにやってんだあいつら…!つかえねー!」
俺は側にペッと唾を吐き捨てる。
次は中衛だ。
ここには谷やんがいる。
ヤツは今、拳闘ブームだ。
リカルドと勝るとも劣らないスキルを身につけ、
「オサーンのリカルド」
とも呼ばれている。
だが、あの女は武器を構えていた。
上手く拳の語り合いにもっていけるか…
…どうやら挑発は成功したようだ。
女はAK銃をかなぐり捨てる。
バシィ!
ビシィ!
…こりゃなんのアニメか。
ドラゴ○ボールか。
望遠レンズを使わなくても、
夜空を照らす光が見える。
そう。
二人が拳を交えたときに閃光が発生している。
「なっ…!」
ドサリ。
谷やんが丸まった状態で倒れた。
あの女…何やりやがった…
ふ、と見ると、谷やんの傍らにはみかんの皮。
「……。」
確か、ヤツの嫁はみかん好きだった。
だが、ヤツはみかんが嫌いだった。
その天罰だ。
そういうことだろう多分。
望遠レンズごしに、こっちへ向かって一目散に走ってくる女が見える。
「くっ…!」
俺はそのまま、照準を合わせようとした。
当たっても構わない。
ヤツのことだ、死にはしないだろう。
だが、望遠レンズの中の女が、髪の毛から何かを引き抜いた、と思った瞬間。
…消えた。
「!?」
次の瞬間、えもいわれぬ衝撃が…下半身から…
「うああああああ!」
意識が…一瞬で飛びそうになる…こ、これは…
「秘技、デ・ン・マ♪」
くらくらとする視界に、最後に捉えたのは、にんまりと笑う女。
「く…くそ…」
「ティラノザウルスにかなうと思って?チワワさん♪」
やめろ…そのコードネームで俺を呼ぶな…
そう、言おうとして、俺はまさに昇天した…。
…。
…その後。
なんとか意識を取り戻した俺は、下半身の惨状に驚きつつも起き上がった。
「…あの女は…?」
脱走した気配はない。
「…?」
どうなったのだろう。
側に転がっていたデンマを手に取ってみる。
ヴィイイイーン
…すごい武器だ…
標準装備にしようかと思った時。
『今日のおやつ、幻の名酒と炙りUta、完売しそうですよー!』
元気な声のアナウンスが響き渡る。
…あれは暁だな。
…もしや。
俺は、食堂に向かった。
そこには、おいしそうに酒とUtaをむさぼる女がいた。
「…。」
所詮はオサーン。
そこから逃れられるほど、人間簡単じゃない。
「…隊長。」
気がつくと、谷やんが脇に立っていた。
「…あぁ。所詮やつもオサーンだったと言うことだ。」
「いや…そうじゃなくて…なんで下半身剥きだしなんですか…?」
「…。」
「…。」
「ぱんつ、かして。」
「やです」
こうして、今日もオサーン収容所は平和である。
世のため人のため、
オサーンはオサーンとして生きていくのがよい。
この世には純潔かオサーンかの二種類しかいない。
つまりは、そういうことだ。
END
2012.2.21
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なつかしき思ひ出ww
THWのメンバーだけどあんまし関係なかった。