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【チカナリ】いただきます

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「んじゃあ、帰る」
長宗我部がそう告げると、
「もう二度と厳島の地面を踏む出ないぞ」
毛利から辛辣な一言が返ってきた。
「確かにいきなり押し掛けたがその扱いは酷くねぇか!?」
長宗我部のツッコミに、毛利はフン、と鼻をならし、その後立ち上がろうと足に力をいれた……が。
「? どうかしたか毛利?」
そのままの状態で全く動こうとしないのだ。
「……なんでもないわ」
「そうに見えねぇけどな……」
お人好しの長宗我部は、毛利を放っておけず、止まっている毛利に歩み寄った。
「立つの手伝ってやるから、ほら」
ぐいっと毛利の手を掴み、立たせようとする長宗我部。
「……ふ……ぁっ!」
「!?」
そうせんとした時の毛利の声に驚き、思わず手をはなしてしまう。
「おい毛利…お前、」
「黙れ」
「いやだって今、」
「黙れ」
「「………」」
長い沈黙が降りた後、その静寂を珍しく毛利から破った。
「……足が、痺れた」
「テメェがか?そんなことってあんだな…」
「当たり前であろう、我であろうと長時間の正座では痺れる」
むっとしている毛利に、長宗我部は妙な悪戯心が沸き、もう一度毛利に近づいた。
「何だちょうそか……っ!?」
そして毛利の足を指でつんと突いた。
「面白ェー・・」
「貴様……!」
恨めし気に長宗我部を睨む毛利の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「そんな痺れてんのか……」
多分痛くて大きく抵抗ができないのであろう毛利は、せめてと長宗我部の手を払おうとする。
「おっと」
細い毛利の手では、対称的に大きい長宗我部に対抗できず、片方の手で両手を直ぐ掴まれてしまう。
毛利の膝の下へ腕をすべらせた長宗我部は、そのまま押し倒した。
「帰るのではなかったのか長宗我部……っ!」
「んー?ああ、あんな物言いされちゃカンタンに引き下がるのもなんかな」
黒い笑みを浮かべる長宗我部に、毛利は涙目で睨む。
「……んな顔で見られると俄然ヤる気もそそられるってモンだよな」
膝を抱えていた方の腕を少しズラし、毛利の足を突く。
「……やめっ…!」
いつもの態度と今の態度、どっちが可愛く見えるのだろうか。
「俺にしか見れないって所がやっぱ後者がいいよな、うん」
「うるさい黙れ……!」
今そんなこと言われても可愛く見えるだけだ、と思いつつ、長宗我部はそっと毛利の耳元で囁いた。
「いただきます……ってな」
作品名:【チカナリ】いただきます 作家名:涙*