魔法少女リリカルウィッチーズvol.5
「ううん、全然平気だよ」
「無理すんなって。サーニャ、お前の言う通りだ。なのはもコアの破壊で相当無茶したんだ」
気丈に振る舞うなのはを見て、ヴィータが言う。
「とすると…脱出はかなり厳しそうだな」
エイラが言う。
「ああ。まともに飛べんのが、私とエイラ。お前だけだからな」
「多分、そろそろ異変を感じて外から救助が来ると思うけど…」
それを聞き、なのはが言った。
「おかしい。いつになったら宮藤達は出てくるんだ?」
バルクホルンが言う。
「中で何かあったんじゃない?」
エーリカがそれに答える。
「その可能性しか無いな。だがそれなら、通信や救難信号があっても良いんじゃないか?」
「…もし、それらが出来ないような状況だとすると…まずいわね」
ミーナが言う。
「ゆりかごも高度が下がってきてる。時間もないぞ」
「八神二佐」
「わかっとるで。救助班やな」
「はい。二人ずつ選出しましょう」
「ほんならこっちは…私は動けんから、フェイトちゃんとシグナムに行ってもらおか」
「了解」
「了解しました」
「ウィッチーズからは…」
「私に行かせてください!」
リーネが口を開く。
「リーネさん…ええ、任せるわ。あと一人は…」
「ミーナ、私が行く!」
ミーナのインカムに通信が入る。その相手は、
「少佐!?身体は大丈夫なの?」
「何、もう充分休んだ。迎えにくらい行かせてくれ」
美緒が皆に合流を果すと、救助班の四人はゆりかごへと入っていった。
「しかし、高町達はどこにいる?」
「待て」
三人を制すると、美緒は眼帯の下に隠れた魔眼でゆりかご内部をくまなく見る。
「いた!最下層だ」
「時間がかかってしまいますね」
フェイトが言う。
「む…これは?」
「坂本少佐、どうかされたんですか?」
「ああ、いや…艦橋から真下に最下層まで続く大穴が開いているんだ」
そう聞いてピンと来たのはシグナムとフェイト。
「その大穴…」
「ヴィータがやったのかもね」
「行ってみましょう!」
四人は艦橋へ向かう。
「ここだな。とてつもない穴だ」
「すごい…本当に下まで穴が開いてる」
「ふっ、あいつらしいな」
「そうだね。さすがヴィータだよ」
四人は口々に感想を述べる。
「だが戻ってこないということは、やはり最下層で何かあったんだろう。行くぞ」
美緒が先導する形で、四人は最下層へ降りる。
「この音…ストライカーだ!」
「救助が来たみたいだな」
エンジン音を聞き付けたエイラとヴィータが言う。
程なくして美緒達が救助にやってきた。
「無事か、みんな!」
「し、少佐!?」
「大丈夫なんですか?」
「ああ。私なら心配いらない。全員一応は無事だな?」
美緒が皆を見る。
「芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん…」
リーネを見た芳佳は、今にも泣きそうになる。
「どうしたの、何かあった?」
「私、私…!」
リーネは芳佳をそっと抱き留める。
「なのは、また無茶したんでしょ?」
座っているなのはを見てフェイトが言葉をかける。
「うん、ちょっとね」
「シャマル先生のお説教、覚悟しておいた方がいいよ?」
「はーい」
「リトヴャク、足は大丈夫か?」
「はい、平気です。ありがとうございます」
「それなら良いが」
その会話を、リーネは聞いていた。
『サーニャちゃんの足…芳佳ちゃんなら治せるはずなのに、どうして…?』
そして、こんなことを考えていた。
「みんな、話は後だ。まずは脱出するぞ!」
こうして、全員が無事にゆりかごからの脱出を図った。
「こちら坂本。全員脱出した。あとを頼む」
美緒がはやてへ通信を入れる。
「了解や。キャロ、ルーテシア。いくで!」
「了解!」
「了解」
はやての合図で、キャロとルーテシアはそれぞれの究極召喚獣を操ってゆりかごに最大の攻撃を直撃させる。
「響け終焉の笛、ラグナロク!」
はやても、自身の最大攻撃魔法をゆりかごに当てる。
ゆりかごはゆっくりと軌道を変え、ついに海へと落下したのだった。
作品名:魔法少女リリカルウィッチーズvol.5 作家名:Dakuto