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りょーすけ
りょーすけ
novelistID. 45534
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サッカー 【1】

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寒い日が続いていたここ最近には珍しく、ぽかぽかと日差しの心地良い日で。学校が午前中で終わり、いつもの帰り道を神童と駄弁りながら歩いていた。
何気ない会話をしている途中に、神童がふと立ち止まる。
「どうした、神童」
「すまない霧野、教室に忘れ物をしてしまったようだから先に帰っていてくれないか?」
よほど大切な物だったのだろうか。霧野に反論の余地も与えず、神童はさっき曲がったばかりの角に消えていった。

瞬間、けたたましいクラクションとブレーキ音が耳をつんざく。立て続けに、肉の鈍い音も響いた。
霧野は、嫌な予感が拭いきれず、急ぎ神童の消えていった角をまがる。
視界に飛び込んできた景色に、目を疑うしかなかった。
トラックと、その前に広がる血の中に倒れている神童。受け入れ難い現実に言葉は出ず、ただ立ちすくみ目を見張る。周りの色彩がどんどん失われていくのを感じた。
「神童...?」
開いたままふさがらない口から、親友の名前が零れる。
霧野は崩れ込むように神童に駆け寄り、肩を掴んで揺さぶりながら狂ったように“神童”と繰りかえした。
神童の目はかたく閉じられたままで、開きそうもない。
どのぐらい、それを続けていただろうか。
「すみません、患者から少し離れてください」
事務的な声に、我に返り顔を上げて周りを見渡す。神童を“患者”にしたトラックはなく、代わりにパトカーと救急車が止まっていた。近隣の人が通報でもしたのだろう。
霧野は、神童が救急隊員の手によって担架に乗せられ、救急車に運ばれていく様子をぼんやりと眺めた。
救急車のトランクがガタンと閉められる。救急車は、サイレン勇ましく発車していった。ほんの一瞬の出来事だった。
「神童...死んじゃうのかな...」
霧野の、ぽつりとしたつぶやきに、パトカーから降りてきた警察官が、
「血の出方から見て、おそらく死にはしないだろうね」
と答えた。霧野はぱっと振り返る。
「本当ですか!」
「保証はできんがな」
警察官は肩をすくめた。
「で、君はさっきの彼の友達かね?」
恋人です、と言いたい気持ちを抑え、友達ですと答える。
それからは、世間話でもするかのようにのらりとした口調で、霧野の身元、神童の身元、轢いた車のこと...事故に関わるいろんなことを聞かれた。
口調に多少腹は立ったものの、機械のように淡々と話す警察官じゃなくてよかったとほっとしたりもした。
作品名:サッカー 【1】 作家名:りょーすけ