かっ飛ばせー
ルシファー投手、かなり慎重ですね。
そうですね。ええ。アザゼル選手のことをかなり意識して投げていると思います、顔を見ると。
今回はルシファー投手が消える魔球を一度も使って来ていませんが、
やはりアザゼル選手のバッドを警戒してのことでしょうか。
ええ、おそらくそうでしょう。
「何じろじろ見とんじゃ。みせもんちゃうぞ、こら」
アザゼル選手。観客席に向かって何か言っているようですが、こちらからでは聞こえません。
おっと、ここで、ルシファー投手。アザゼル選手に何か話しかけているようです。
アザゼル選手をなだめているんでしょう。さすが、ルシファー投手。投手の鏡。
「おぃおぃ、あっちゃんよう。もっと来いよ!もっと俺を楽しませろよ」
「ルシファーはん。その手には乗りまへんで。あんた、
わしのバットを空振りさすために、わざと挑発してはるんやろ」
「別にぃ。あっちゃんのバッドなんか怖くないしぃいい」
「ほな、次は消える魔球、つこてくれますねんな」
「はん?それとこれとは別だっつの。俺、次ぜってぃつかわねぇよ」
というのは嘘で、次は消える魔球だぜ。へっへへへ。次で終わりにしてやんよアザゼル。
「わかりやすい、合図やなぁ・・・」
「おま、今、なんつった?」
「いや、なんも」
ルシファー投手。しきりにグラサンをかけ直してます。いよいよ出るんでしょうか。消える魔球。
そうですね。おそらく魔球を出す合図ですね。
九回の裏、ここで、アザゼル選手、ホームランを打てば一発逆転サヨナラ勝ち。
対するルシファー投手。次を守れば、そのまま逃げ勝ち。
このまま慎重なプレイで終わるのか。
それとも、やはり最後は消える魔球で決めるのか。
おっとルシファー投手!足を高々に上げた。
「これで決めてやるよ!!アザゼル!!」
「それはこっちの台詞じゃあああ」
高々と上げた足がマウンドに地響きを鳴らし、
手に吸い付いたボールが手からスライドすると、急激な加速を得た。
それは風、それは刃、それは光、それは一瞬の出来事。
アザゼル選手なにもできず!!やはり今年も進撃の巨○が勝利!
おしくもハン○、勝ち星に届かず。
「なんや・・・これ・・。ほんまになんも、見えなんだ・・・。わしの完敗や・・・。
ルシファーはん、あんたなら、やっぱやってくれるとおもたわ」
「わはっははは。あたりめぇだよ。俺ルシファーだよ。きまってんだろ!そんなもん」
「ちょっと待ってください!!!」
おっとあれは・・・、サクマ監督。
一体なんでしょう。勝敗はもう決したはずですが・・。
「どうしてですか!どうしてなんですか」
「サク、お前はひっこんどれ」
「なんでですか!なんで嘘つくんですか。アザゼルさん」
「嘘なんかついとらん。負けは負けや」
「アザゼルさん・・・。私は知っています!!」
「皆さん。球場の上を見てください!!!」
おっと、どうしたことだ。サクマ監督。ドーム球場の上を指さした。
んんん!!これは一体どういうことだあああ。
ボールが・・・!ボールが・・・天井に!!!刺さっているううう!!ドドドドド!!!
「おぃおぃおぃおぃ・・・。嘘だろ・・・。俺は今、超ビックな驚きだぜ・・・。
アザゼル、お前、いつ打ったんだ・・・」
こ、これは!!消える魔球ならざる消えるバッド。ボールもバットもどっちも見えなかったあああ!!
全く見えなかったあああ!!!
すごい、すごすぎるぞ~~アザゼル!!!
「サクマはん。だまっとったんは悪かった。せやけど、このまま、ルシファーはんに負けでも、ええと思たんや。
それくらい今日は素晴らしい試合やったんや。ほんま」
「アザゼルさん、良かった・・・、良かった・・・」
サクマ監督が泣いた!今シーズ何度目の涙でしょう。ほんとに素晴らしい良い試合でした。
ほんとうにほんとうにありがとう。サクマ監督、ルシファ投手、そして、我らがアザゼル選手!!!
「いやぁ、勝ちを譲るのも男らしさやとおもとったけど、やっぱ勝つちゅうのは気持ちええもんですなぁ」
「ああ、そうそう。後、バットちゃうから。性槍○クスカリバーやから」
こうして、盛大な歓声と共に、球場を後にしたアザゼル達であった。
「プルプルプルプル」
「プルプルプルプルプル」
「はい、もしもし。こちら、ルシファー」
「いやぁ、ルシファーはん。おつかれっす」
「おう、あっちゃんか。俺すっごい活かしてただろ」
「ほんまですわ、いやぁ今回はこちらに黒星付けてもろて、ほんまに感謝してまっさ」
「な~に、いいってことよ。あっちゃんと俺の仲だろ」
「いやぁ、ルシファーはんの時間巻き戻し能力。ほんますごいでっさ」
「おぃおぃ、よせよ。照れるだろ。俺様に掛かったら、あんなの朝飯前だっつの」
「ほんまに助かりましたわ。これでわしの地位も当分安定でっさ。ほんま、おおきに。
ああ、そうそう。それと報酬はいつもの口座に入れときますさかい。ほな、今後ともよろしゅう」
「おう、またな」
「プープープープー」
携帯を超クールなズボンにしまうと、俺様は活かした顔で、
再び、街を超クールに歩き、夜の街へと姿を消したのだった。