【家三】四つ葉
「おい家康」
「ん?どうした三成」
一面緑の地上に屈みこみ、何かを探し始め、一心不乱に緑を見ていた三成が、やっとぽつりとわしを呼ぶ。
「四つ葉だ。やっと見つけた」
どこか高揚した風な三成が、嬉しそうに告げる。
「ほぅ、良く見つけたな」
関心しているわしに、三成はあまり見せぬ笑顔を浮かべながら答える。
「刑部に渡すんだ」
「それはいい」
わしもにこりと笑みを浮かべた。
だが、思う。
四つ葉というのは、人が踏んで、それが葉を何度も分かれさせ、生まれる。
五つ葉などもまた然りだ。だから。
だから、あまり『いいもの』なのかは、わしは分からない。
(踏まれないと育たない。まるでわしだな。)
這いつくばって、やっと立ち上がれるようになって、でもわしの前には沢山の強者が立ちはだかっている。
壁はそう、薄くない。
(三成は、そんなわしを見たことがあるだろうか。)
否、ないだろうな。
……なんてな。
「? 突然停止するな、私のすることがおかしいというのか」
「へ?いや、別にそんなことは、」
慌てて弁解する。ああ分かった、わし、刑部に嫉妬しているのだ。
「……踏まれないものは幸福になれない」
「は?」
「いや、違うな……」
首を傾げている三成に、今度こそ呟きではなく、発言する。
「踏ん張れないものに幸福はない!」
「意味が分からん!…それと、決め顔をするな!気色悪い!」
「酷いな三成!だがそこがいい!」
「死ね!」
「平気な顔でいうもんじゃないぞ三成!」
キリッとした顔で三成と喋りながら、三成の知らぬ内に現れた刑部を振り返る。
(……早く病気治すんだぞ?)
(しかと。今回ばかりは頷いてやろ、徳川よ)
((三成のために))
「おい家康!聞いているのか家康!!いぃぃぃえぇえええやぁああああぁぁああすぅううううううう!!!!」