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〔蘭拓〕 隣

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いつも隣で、神童を見ていた。


彼はサッカーの才能があって、頭もよくて、家は金持ちで。
ピアノも上手いし何をやっても優秀で。
本当に彼は「神童」だった。

一方の俺は、いつも神童の隣に居るだけで
頭だってサッカーだって普通で。
子供の頃から神童は俺の憧れだった。
輝いてて、いつも褒められてて。

でも、彼は泣き虫だ。

いつも同級生にいじめられては泣いて、その度に俺が庇って。
いつしか、俺が居ないと神童は駄目なんじゃないかと思うようになっていった。

でも、違った。

逆だったんだ。

神童が居ないと俺が駄目だったんだ。
その事に気づいたのは、つい最近だった。

彼の周りに後輩や仲間が集まって。
その事が本当に辛かった。

ずっと隣に居たのは俺なのに。
ずっと隣で見ていたのは俺なのに。
ずっと隣で守っていたのは俺なのに。
ずっと隣で、ずっと隣で、ずっと隣で。
ずっと彼の幼馴染をやっているのに。

そして、気づいた。
幼馴染のままじゃ駄目なんだ、って。

幼馴染じゃ、いつか、誰かに隣を奪われる。

なら、もっと、特別な存在。

絶対に、絶対に、絶対に隣は渡さない。

そう心に決めた。

出した結論は、「恋人になる」という事。

恋人ならいつでも傍に居られるし、簡単に隣を奪われない。
それに、神童だってもっともっと俺を愛してくれる。



案外、計画は上手く行った。

「ずっと、ずっと、大好きだった。いつの間にか、幼馴染から恋になったんだ。」

だって。振られるのを覚悟して言ってみたら
神童から「スキ」だって。
笑えるね。神様。
こんなのアリか?
簡単に手に入るなんて。

「大丈夫だよ、神童。ずっとずっと傍に居るよ。絶対、神童を守るから。」

だから、ずっと傍に居てね神童。

隣は俺のものだよ。
作品名:〔蘭拓〕 隣 作家名:玉響甘楽