Wizard//Magica Wish −12−
いつまでも続くと思っていた日常。
そんなものは、存在しない。
たった数十分の出来事で、俺の全てが崩壊した。
何故、人生というのは自分が描いた台本通りに進行しないのか。
何故、人生には別れというものが存在するのだろうか。
「ここで終わりよ、操真ハルト」
「止めて!ほむらちゃん!!」
「あ………。」
俺は、一体何の為にこの世に命を授かったのだろうか。
こんな結末になるために生きてきたのだろうか。
−違う…それは違うぞ、操真ハルト−
それでは一体何だというんだ。
俺は…何の為に…誰の為に生きてきたんだ。
−答えは既に出ているだろ…もっと簡単に考えるんだ−
じゃあお前が教えてくれ…
俺は、何故ここまでボロボロになってまで戦ってきたんだ…生きてきたんだ…。
教えてくれ…頼む。
−簡単なことだ…−
−全て…自分の為だ−
「…っ!!」
「『ディフェンド』プリーズ!」
「なっ…」
ほむら がウィザードに向けて放った銃弾は全てはじかれてしまった。無意識中にウィザードが発動した防御魔法が彼自身を守った。ウィザードの身体を中心に台風のように風が舞っている。
「俺は…」
「ハルトくんっ!!」
「俺は…まだ死ねない…っ!!」
そう言い残しウィザードはハリケーンスタイルの特殊能力である飛行魔法を使用し、何処かへと去っていった。ビルの屋上に残ったのは まどか、ほむら、そして息を引き取った千歳ゆま だけとなった。ほむらは軽くため息をして長い黒髪をなびかせた。
「ほむらちゃん…」
「何?まどか」
「私が言いたいこと…わかってるよね?」
「………。」
「…なんで…なんであんなことしたのっ?答えてよ!!」
まどか が血相を変え ほむらの服を掴み彼女に問い詰めた。しかし当の本人は一切表情を変えず、ただ まどかを見つめていた。その表情には全てを決意したかのようにみえた。
「まどか…あなたに話さなくてはいけないことがあるの」
「そんなことっ今はどうでも良いよ!!ねえ答えてよ!なんで ほむらちゃんはそうまでしてハルト君を狙うの!!?一体ハルト君が何したっていうの!!?」
「その…操真ハルトの事よ。まどか」
「えっ…」
「あなたは、知らなくてはいけない…いえ、もっと早く話すべきだった」
「何?一体何を言っているの?ほむらちゃん…あなたが言っていること…よくわかんないよ」
「……ここじゃ場が悪いわね…着いてきて」
ほむら は自分の服に掴まれていた まどかの手を優しく離し、そのままビルを降り始めてようとした。
「…っ…」
まどかも彼女の後に続いた。一体彼女は何を知っているのか。そして彼女がウィザード…いや操真ハルトを狙う理由…その理由を聞いた瞬間、自分は納得してしまうのだろうか。…そんな不安が まどか の脳裏を横切っていた。
「あっ…ゆまちゃん……ねぇほむらちゃん!」
「そっとしておきなさい…もう既に警察の包囲網ができているわ。彼女が警察に発見されるのも時間の問題よ…」
「う…うん…」
−ごめんね…ゆまちゃん…−
ビルの屋上に残ったのは、横になって静かに息を引き取った千歳ゆま のみとなった。
作品名:Wizard//Magica Wish −12− 作家名:a-o-w