Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)
「翔太郎、お前がどう考えているかは知らねーが、そいつだって我々風都警察署の刑事なんだぜ?」
真倉の上司、刃野幹夫。
おそらくは真倉の一番の理解者。
「そりゃあドーパント相手にこいつが勝てるなんて俺も思っちゃいないが、アジトの様子を調べて逃げて帰ってくるくらいの動きはできるだろうよ」
HAHAHA-、と相変わらず緊張感のない調子で刃野は話す。
「しかし、ジンさん!」
そんな刃野に翔太郎はくらいつこうとするが、刃野はそれを手で制す。
「翔太郎、お前は何もひとりで戦っているわけじゃねー」
それは、翔太郎の心情を見透かした刃野の言葉だった
「・・・・・・」
思わず黙ってしまう翔太郎。
「確かに今は照井刑事やアキちゃん、お前さんの相棒のフィリップまで倒れて、誰も助けがなくて焦っちまう気持ちも分かる。だがな、翔太郎。それでもお前はひとりで戦っているわけじゃねーんだ。俺もいる。真倉もいる。街に出ればあの情報屋たちだって、きっとお前の力になってくれる」
「・・・・・・」
「こんな何があるか分からない危険な街だ、それでもみんなこの街が気に入っちまって街を出て行こうってヤツは一人もいない。みんなある程度の覚悟は出来ているのさ」
「・・・・・・」
「だから、お前がひとりでいろいろ背負い込んで戦う必要は、どこにもねーんだ」
「・・・・・・ジンさん・・・・・・」
「だから翔太郎、こいつをお前の力にならせてやってくれ」
刃野は真倉を指差す。
「確かにこいつは、アホでバカで弱いし仕事出来ないくせに威張るし強いものにはかーなーり弱い二枚舌で・・・・・・」
「ちょ、刃野刑事!?」
そこまでいっちゃうの?と軽くショックを受けている真倉をよそに、刃野は、しかし、と言葉をつなぎ、
「しかし、こいつのなかには風都署の刑事(デカ)魂だけはしっかり詰まっている!」
真倉は絶対に信念を曲げない男であることを公言した。
「こいつとペアを組んでいる俺が言うんだから、間違いねーよ」
HAHAHA-、と相変わらず緊張感のない調子で太鼓判を押した。
「まぁ、ぶっちゃけこいつひとりでアジトに行くってのは俺も反対だけどよ、翔太郎、お前が一緒についていくのなら何とかなんじゃねーかなー、てのが本音の本音? みたいな?」
「・・・・・・」
ちゃらんぽらんなのか、真剣なのか分からない刃野の話を聞いていた翔太郎。
「・・・・・・はぁ」
何かを諦めたように溜め息をつく。
「オイ、マッキー。これから行くところは本当に、冗談じゃすまないほど危険なところなんだ。俺はお前を守っているヒマはねー」
「・・・・・何を気色悪いことを言っている。男に守られる男がいるものか。俺の方こそ、現場で貴様を構ってやれるほどの余裕はないぞ」
「気持ちの悪ぃこと言ってんじゃねーよ」
翔太郎は帽子を被り直す。
目元を隠すように。
笑っている表情が誰からもみえないように。
「そんじゃ行くか。ジンさん、悪いけどアンタの相棒を借りていくぜ?」
「おっけー、特に返さなくても大丈夫だ」
「おい!?」
適当に挨拶を交わす三人。
「よし、それじゃあ一丁俺らで悪党どもに、一泡ふかせてやるとするか!!」
作品名:Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW) 作家名:ケイス