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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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子ども一人救えないのに何が正義の味方だというのだろうか?
宮部は納得できない。
同じ者として。形は違えど、理念や思想は違えど、かつてはこの世の平和を願った者としてここで納得してやるわけにはいかない。
宮部総一という男は元来、感情ではなくどちらかというと理屈で物事を考える人間だ。
しかし、今この瞬間。
自分よりもはるかに高みにいるはずの正義の味方を圧倒しているのは、およそ彼らしくない激情だった。
「あの子が一体何をした?」
宮部は端的に問う。
「普通の子どもだった。出会う者に暖かい感情を与え、この街の悪には悲しいくらい無頓着な、どこにでもいる子どもだった」
宮部は思い出すように述べる。
「悪魔の研究をし続けてきたこの私にも、"日常"という素晴らしいものがあるということを教えてくれた!」
宮部はそれを反芻する。
「そんな子どもひとりも救えなくて何が街の守護者だッ!! 何が万人を救える正義のヒーローだッ!!」
そして宮部は、自分の結論にたどり着く。
「よぅ、Mr.ヒーローマン。世間は貴様の在り方を認めているようだが、」
宮部は倒れているダブルにぐん、と顔を寄せ、
「私は絶対に認めない。認めるわけにはいかない。貴様の存在など爪の先から頭のてっぺんまで余すところなく全て否定してやるぞッ!」
ドッゴォォォーン!!!
ダブルをサッカーボールのように思いっきり蹴り上げた。
「ぐああっ!!」
80キロほどもあるダブルの体が宙を舞い、そしてグシャ、という生々しい音を立てて再び地面へと墜落する。その際に、ダブルは左半身を強打した。
「・・・・・・・・う・・・・・・・ぐっ」
ダブルの左側である翔太郎はそのダメージにより気を失ってしまう。
「翔太郎!」
相棒のフィリップは翔太郎へ呼びかける。
ダブルの右側であるフィリップの意識が健在だったため、変身は解かれることはなかった。
しかし、左半身の自由がほとんど効かないため、立ち上がることができない。
「翔太郎! 翔太郎! しっかりするんだ!」
必死に相棒の名を叫び続けるフィリップ。
「もうじき、私の煙がこの風都全土を覆う」
「っ!!」
もちろん、それを見逃すほど彼らの敵は甘くはなかった。
宮部は動けないダブルに一歩一歩近づく。
「そうすれば、ここにいる人間はあらゆる痛み、苦しみから解放される」
それは多分、その受け皿からこぼれ落ちてしまった人間を無視しての話。
「これが我々の、・・・・・・いや、この私の真の目的」
しかし、宮部はそれを深くは考えない。
「人々を安息と平穏の地へと導き、それを守護すること」
それは目的遂行のための『仕方のない犠牲』なのだから。
「そう、この私こそが人類の守り手、『サイレント・キーパー(平穏の守護者)』なのだ!!」
そして宮部は叫ぶ。
歪み切ってしまった自分の信じる正義の名を。
「さぁ。審判のときだ、Mr.ヒーローマン」
この街に正義は二つも必要ない。
宮部はその足を振り上げ、この闘いにピリオドをうつ。

「神への祈りは済ませたか?」

その声は何者にも、おそらくは己にすらも厳しい荘厳で侵しがたい音だった。