真・恋姫†無双~創製の異端者~ 『日常の終わり』
タイムセールの激闘から無事生還した迅のエコバッグには戦利品がぎっしりと詰め込まれていた。
「フフフフ………これで暫くは買い物せずに済みそうだな」
スーパーから学校までの道を豚肉が傷まない様に気を付けながら歩いていると、行きでは見かけなかった占い屋が露店を出していた。
それが胡散臭い感じのおっさんや婆さんなら見向きもしなかっただろうが、露店を構えていたのは俺よりも年下であろう少女なのだ、これに驚いた俺は思わず露店立ち止まってしまった。
「あら、運命をご所望?」
立ち止まった俺に少女は大人びた言葉でそう尋ね、俺の返答も待たずに言葉を続けた
「丁度暇していたのよ。お代はいらないから私にあなたの運命を見せてくださらない? 」
少女は対面にある椅子に手を差し伸べて俺に座るよう促す
「……………わかった5分だけだからね。じゃないと戦利品が腐ってしまう」
「あら、随分と繊細な戦利品なのね。でも大丈夫、ここに便利な箱があるから」
俺が席に座り少女を正面に捉えると、少し大きめのクーラーボックスを差し出していた
「用意周到だね」
「ふふふ………誉め言葉として受け取っておくわ。じゃあ、運命を見せてもらううわ」
「運勢の間違いじゃないかな?」
「間違ってないわ。私が視るのは貴方の未来……これから起こりうる事象なのだから……ね?」
言葉の最後を疑問系にしながら少女はにっこりと笑った
「ふーん、じゃあどうなってるか聞こうじゃないか」
「あら嬉しい。じゃあ早速………」
そう答えた少女は俺の額に手を当てる。冷え性なのか額を触れる少女の手はひんやりと冷たくて心地良いものだった
「………………広い荒野が視るわ」
「それで、他には何が視るの?」
「枯れ掛けた木々に尖った岩山………近くにあるのは農村かしら?そして山間には大きな城壁があるわ」
荒野に城壁に岩山………何かのファンタジーにありそうな地形だな。
そう考えていると少女は更に言葉を繋げる
「あら、これは戦場かしら?人だった者があちこちに転がっているわ………でも戦っている構図は数十万対数千ね……数千の方が城壁を守っているのね、善戦してるようね。でも負けるのも時間の問題そうだわ」
「へぇ、未来の俺は戦場に居るのか……まさか既に死んでないだろうな」
例え少女のフィクションでも既に死んでいるのは虚し過ぎるので確認させていただこう。
「生きてるわ……一応ね」
「って事は死にそうだってかい?」
「ええ、不思議な力で自身を強化してるわ……でも無理ね、相手が強すぎて貴方は負けて死ぬ。」
そう告げて、彼女は俺の額から手を離して此方を見据えた
「もし生き延びたいのであれば貴方は逃げ続けるしかない。例え誰かを犠牲にしてでもね」
少女が話終えたと同時に俺はこの話を真剣に聞いている事に気が付いた、何故だ?これは少女のフィクションでありリアルでは無い。無いはずなのに、実際に起こる気がしてならなかった
「これが貴方の運命であり未来よ」
少女の話に飲まれた俺に止めを刺さんと言わんばかりの一言(いちげき)
「…………」
「あら、言葉にならない程ショックだったかしら?ごめんなさい、でも事実よ」
少女の言葉が耳に入らなかった、俺は有り得ない位の衝撃を受けたのだ
「……………ぇな」
「……何か言いましたか?」
「………っげぇな」
「…………えっ?」
「マジスッゲェな!!お前の話!!」
少女は俺の言葉を理解できずに唖然とした表情で見ている
「お前天才だわ、話に飲み込まれたよ。なんか鬼気迫るってゆーか」
「ちょっと、話聴いてたの?貴方死ぬのよ?わかってる!!」
分かってるって。つまり
「お前は一流の話し手だってな」
「分かって無いじゃないこの馬鹿!!」
少女は最初の大人びた雰囲気とは違う年相応の雰囲気に変わった
「まぁ、楽しかったよ。また時間があったら話を聞かせてくれよ」
「あっ!!こら、待ちなさいよ。私の話はまだ!!」
俺はクーラーボックスからエコバッグを取りだし少女に手を振りながら学校に向かって駆け出したのだった。
「こらぁ~!!ほんとに待ちなさいよ~!!!馬鹿ぁぁ!!!!」
その背後で耳付きの帽子を握った少女が涙目になりながら迅を引き留めようと叫んでいた声は空の彼方に消えていったのであった
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チャイムが鳴り響く廊下を駆け抜けて教室に飛び込むとクラスメイトが手招きするので息を整えながら歩み寄った
「おう、間に合ったか?特売」
「バッチリ。目当ての戦利品を全て手に入れたぜ」
「そりゃ良かった」
互いにニヤリと笑い合って戦場の出来事を話題に話す事にした
迅はこの時既に逃げられない運命に導かれているとは露とも知らず会話を楽しむのであった。
始めに違和感に気が付いたのはクラスメイトの女子だった。
『いつも時間通りに来ることで有名な先生が15分も遅刻している』
クラス中にどよめきが走る。クラスメイト達は『確かにおかしい』『あのウザイのが来ないなんてどうかしている』『熱があっても教壇に立つのに』などと口々にする
「まさに驚天動地だな。」
「まぁ、来ないなら俺はトイレに行くわ」
「…………ほんと自由だなお前は」
俺の行動に呆れているクラスメイトを横目に立ち上がり教室を出た
その先に手招きする非日常があるとも知らず
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「………なんだ?この違和感は」
教室から出てトイレに向かう途中、妙な違和感がある
「音が……聞こえない?」
そう音が無いのだ。いくら授業中だからといってここまで静かな筈は無いのだ。
先生の声も生徒の声もチョークの黒板を叩く音も外の音も
「何が起きているんだ?」
「………儀式だよ、天道 迅殿」
背後から聞き覚えの無い男の声が聞こえたので距離を取り振り替える
そこに居たのは年老いた老人が不適に笑いながら立ち尽くしてい。
「………お前は誰だ。」
「はじめまして……儂の名など意味は無い、強いて言うなれば君を試す者じゃ」
試す者?俺の何を試すんだ?
「ほれ、こいつを受け取れ」
老人が投げ寄越した『物』を受け取り確認する
「なんだこれは……宝石か?」
「そいつは珍しい宝玉でね、君の役に立つだろうよ」
そう良い終えた老人自身の胸の前で何やら印を結びブツブツと呟きだした
「役にって………何のだよ!?」
「お喋りは終いじゃ、頼んじゃぞ。」
老人に全てを聞く前に俺の視界は歪んでいきついには何も見えなくなった
作品名:真・恋姫†無双~創製の異端者~ 『日常の終わり』 作家名:まにまにまーや