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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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 ゴンドワナ大陸の中央部には狩猟民族、キボンボのいる村があった。同時にそこは村の唯一神を信仰する所でもあった。
 しかし、その信仰する神、ガンボマは黒魔術的特性の強いものだった。
 こんな伝説がある。キボンボの村に作られたガンボマ像に祈りを捧げ、宝石を捧げると、認められた魔術師は黒魔術をガンボマより授かることができると。
 この伝説を信じ、黒魔術を狙おうというのがキボンボの族長のアカフブである。
 アカフブはこれまでもガンボマへ祈りを捧げる儀式を行っている。しかし、そのどれもが失敗に終わっていた。捧げるべき宝石のどれもがガンボマの望みには合わなかったのか、ガンボマ像は決して己が体内にアカフブを招き入れる事はなかった。
 次こそ儀式を成功させるべく、アカフブは強硬手段に入ることにした。別の村より宝石を強奪することである。そうまでしても黒魔術の力が欲しかったのだ。
 マドラの襲撃から三日後、アカフブの部下達が黒水晶を持ってキボンボ村へ帰ってきた。
「アカフブ様、只今帰りました」
 部下達はアカフブの家へと報告に来た。
「おお、帰ったか。して、どうだった?」
 アカフブは訊ねた。
 アカフブは部下達同様に恐ろしい印象のフェイスペイントをしている。髪は縮毛で縮れており、顔の大きさを超えて広がっているアフロヘアーである。体型は魔術師故に部下達に比べると大分細身であった。
「お喜びくださいアカフブ様、この通り最高の宝石を手に入れて参りました」
 部下の一人がマドラで強奪した黒水晶を取り出した。その気品のある光沢はアカフブを満足させるのに十分だった。
「おお、でかしたぞ!」
 アカフブは黒水晶を受け取り、それを様々な角度から眺めた。
「これならばガンボマ様もお喜びになろう」
 アカフブは確信を持っていた。今度の儀式こそ必ずや上手くいくであろう、きっとガンボマから導きを受けることができるに違いない。
「でかしたぞお前達、お前達も遠征で疲れていることだろう。二日後の夜に儀式を行う。それまでしっかり休んでおくのだ」
「はっ!」
 部下達は去っていった。
「ふふふ、今度こそ、今度こそ黒魔術を手に入れてみせるぞ…」
 アカフブは一人不敵な笑みを浮かべるのだった。
    ※※※
 キボンボ村からミング山脈を隔てた南に位置するニリ村にガルシア達は来ていた。
 ウェイアード暦でそろそろ夏も終わろうかというところだというのにニリ村含めゴンドワナ大陸はどこへ行っても暑かった。アンガラ大陸のイミル村がほぼ常冬だとすればここはまさに常夏の大陸だった。
「暑い…」
 ガルシア達全員が口を揃えて言った。ニリ村に着いた時点で皆顔中、体中汗だくになっていた。
「あっちいよ…、何なんだよここは…」
 シンは暑さに茹だって言った。割合軽装の彼でさえ茹だる暑さである。しっかり着込んだガルシア、ジャスミン、シバは彼よりもさらに暑く感じていた。
「あっちぃ…」
 シンはうなだれて再び言った。
「もう、暑いって言わないでよ。余計に暑くなるじゃないの…」
 ジャスミンは言った。
「んなこと言ったって暑いもんは暑いんだからしょうがないだろ…」
 砂漠とはまた特性の異なった暑さである。砂漠はただひらすら太陽とその光が熱した砂が暑いのだが、このニリ村の暑さは湿気を伴ったじめじめと鬱陶しい暑さであった。
「大体あなたまだマシな格好してるじゃない、何でそれで暑いのよ」
 シバは口を尖らせた。
「うるせえなあ…、だったらお前も脱ぎゃあいいだろうがよ…」
「な、脱がないわよ!」
「ガルシア、お主随分涼しい顔をしておるのう?」
 スクレータは訊ねた。
「案外考えなければ慣れるものだ。心頭滅却すればなんとやら、だ」
「ほう、さすがカンドラ寺の跡取りじゃな」
「…だから俺は…」
 ジャスミンとシバはまたガルシアの坊主となった姿を想像し、吹き出した。
「だから何が可笑しい!?」
 ガルシアは逃さなかった。
「そんなことよりも、さっさとピカードを捜さないか?暑いんだから早く行こうぜ」
「そうだな…」
 ガルシア達は一先ず村人達から聞き込む事にした。
 ガルシア達が何故ピカードを捜しているのか、それは数日前に遡る。
    ※※※
 ポピーチー村から出発して約三日をかけてガルシア達はマドラへと戻ってきた。
 マドラへ戻ると、ガルシアは入り口で再び大げさな身体検査をされた。前回は頭から足の先までを入念に触れられるだけであったが、今回は服の中まで手を入れられた。上半身の検査が終わり、次は下半身というところでガルシアの身体検査をしていた男はもう一人の警備係の男に小突かれた。今回は二度小突かれていた。
 ただでさえ大げさな身体検査が今度は異常なほどされたのでガルシアはまた何かあったのか訊ねた。すると警備係の男は答えた。
 数日前にマドラはキボンボという蛮族に襲撃を受けた。町は滅茶苦茶に荒らされる事となり、再度の襲撃を恐れマドラは厳重な警戒態勢を取ることにしたのだった。
 それからガルシア達はアラフラより戻った町長達に詳しい話を聞くべく、屋敷に向かった。
 屋敷には町長達が既に戻っており、チャンパの一味という疑いをかけられていたピカードは既に釈放されているとのことだった。
 町の入り口で聞いたキボンボについて話を訊くと、これには屋敷の家政婦が答えた。
 黒水晶を盗まれ、たった一人でキボンボへ向かっていったという。黒水晶を預かっていた長老もだいぶ責任を感じているようだった。
 そこで長老はガルシア達を強い戦士と見込んでピカードを助けに行って欲しいと要求した。ガルシア達は快諾した。
 同時にシンはあることを思い出した。ピカードの黒水晶は彼の船の動力源だということである。
 シンはピカードとしばらく一緒に行動していた。黒水晶を取り戻すことさえできれば、シンが頼むことで船に乗せてもらえるのでは、と彼は思った。
 ピカードを助けることで長い間旅の目的としていた船を手に入れることがようやくできるのである。ガルシア達がピカードを助けに行かないはずがなかった。
 ガルシア達はキボンボへ向かうべく町を出ようとしているところであった。
「それにしても、運の悪い町よね、ここも。二度も襲撃されるなんてね」
 シバは言った。
「まあ、そんな言い方は可哀想よ、シバ」
 ジャスミンは言った。
「それよりピカードも無茶な奴だなあ、キボンボといえばかなり野蛮な連中だって話だぜ?」
 シンはキボンボの噂を耳にしていた。
「急ごう、ピカードに何かあったら大変だ」
「こんな所にいましたか。探しましたよ」
 ガルシア達が急ぎ、町を出ようとした瞬間、後方より声を掛けられた。
「その声は…」
 ガルシア達は振り返った。
「お久しぶりです。皆さん」
 青緑色の髪をした男がニヤリとした。
「アレクス…!」
 アレクスは含み笑いをした。
「本当にお久しぶりですね。出島で別れた時以来でしょうか」
 アレクスはヴィーナス灯台が灯る直前にジャスミンとスクレータを出島まで送った後、そのまま姿をくらましたままだった。
「お元気そうで何よりです」
「アレクス、今更現れて、何の用だ!?」
 ガルシアは怒鳴った。