東方宝涙仙総集編其の<弐拾壱(21)~其の弐拾五(25)>
「大丈夫よ。魔法使いと共に行動するなんて昔から慣れてるわ」
「私の魔法は縦一直線にしか飛ばないわけじゃないのだけは気を付けておいて」
「はいはい」
霊夢達は部屋を出た。
魔理沙達が部屋に入ったのはこの後だったという。
魔理沙&美鈴組
霊夢&パチュリー(+レミリア)組
共にそれぞれの動きをみせだした。
黒幕打倒の時も近いだろう。
■Touhou Houruisen 22
ー紅魔館内部・エントランス付近ー
フランドール、アイラ、シズマの一行はエントランスの近くに来ていた。エントランスの大きな扉の向こうはもちろん外になっており、メイド妖精達が怯えながらざわめいているだろう。
外からエントランスに入ってすぐに大きな階段がある。フランドール達はその階段を上がりきったところにいた。アイラは階段の側面にある木でできた柵の上の手すりにバランスよく座っており、シズマはフランドールと右手と左手で手を繋いで立っている。
「フランちゃん」
シズマが作ったような優しさで呼びかけると、フランドールは細い声で返事をした。
「フランちゃんの言ってた子は本当に来るの?」
「こういう時お姉さまなら絶対に呼ぶはず。でも多分だよ?」
「フランちゃんその子と戦える自信ある?」
「……」
フランドールは口を噤んで首を小さく横に振った。
「魔理沙……」
シズマ達には何を言ったか聞き取れないほど小さな声でその名前をつぶやいた。フランドールは心の底から魔理沙の救いを期待している。霊夢なら自分を敵として認識するかもしれないけど魔理沙は違うはず―そう願っていた。
「その子はお友達?」
名前は聞き取れなかったが、知り合いであることは確信しているシズマが問いかけた。
「わかんない。美鈴も遊んでくれたけど…それよりもたくさん遊んでくれた…。お姉さまよりも、パチュリーよりも…咲夜よりも…」
「じゃあ友達なのね」
黙り込むフランドールの代わりに口を開いたのはアイラだった。
「友達?だとしても邪魔な奴は消すよ」
「こらアイラ」
フランドールに対するアイラの挑発をシズマが注意をするも、闘心と狂気に満ち溢れたアイラに効果はなかった。
「フランちゃんの友達なんてあの変な女しかいないかと思ってたけどねー」
アイラの言う"変な女"とは咲夜の事である。一度フランドールとアイラが遊んだ時、アイラは咲夜の目つきが気に入らなかったのだという。
アイラの発言に対してシズマと手を繋いでいるフランドールの手に一瞬力が加わった。しかしここで怒って攻撃を仕掛けたとしてもアイラに敵うはずがない、と考え冷静に戻った。
何もできない自分が悔しくて仕方ないまま時間だけが過ぎた。
時間の経過する空間に足音が鳴り響いた。次第に足音は近づいてくる。フ
ランドールにとってその足音は三人か四人のグループに思えた。少なくとも一人二人ではないのは確かだった。
ー紅魔館内部・霊夢グループー
霊夢グループはひとまず紅魔館にまだ人が残っていないか探すのを取りやめ、レミリアのいう狂人を探しヴワル魔法図書館内を歩いていた。
ヴワル魔法図書館といえばパチュリーの管理している図書館であり、爆発寸前までパチュリーの居座っていた場所である。図書館は広いうえに隠れやすいということで捜索をする結果になったらしい。
「こう広いと探すのも一苦労ね」
「犯人探しが楽なんて事はどの推理小説にもないわ」
「紅い霧が広まった時の犯人は一瞬でわかったけどね」
そういうと霊夢はレミリアのほうを見た。
「な、なによ!それは私に紅のイメージがありすぎてるからよ!」
レミリアの言葉に霊夢は特に反応をしなかった。
「ここにはいなさそうね」
ある程度探してからパチュリーは他を探す提案を出した。もちろん残り二人も賛成した。
犯人どころか情報ひとつないまま三人は図書館を後にし、廊下を歩いた。しばらく歩くと前の二人に後ろからレミリアが喋り掛けた。
「フランの部屋は?」
二人は考えた。顎に手のひらをつけて胡散臭い私立探偵のようにこう答えた。
「そうね。その可能性はあるわ。フランの部屋にはどうやって行くの?」
「エントランスの大きな階段を上がって右の赤いドアを開けると廊下にでるから……」
レミリアが説明をし終える前に霊夢が話を乗り出した。
「どうせみんなで行くんだから誘導して」
「たしかにそのほうが早い」
後ろにいたレミリアが二人の前に出てフランドールの部屋を目指した。
廊下にある鉄のドアの先にあるコンクリートの階段をずっと下へ降ると地下室へ着くのだという。三人はエントランスに近づいてゆく。
ー紅魔館内部ー
魔法使いと巫女が動き出したぞ。
ええそうですね。
そのうえあの吸血鬼も回復を遂げたな。
ええそうですね。
魔法使いどころか魔女までいるじゃないか。
ええそうですね。
格闘の強そうな中華娘もなかなか戦力になりそうだな。
ええそうですよ。
もう我々の計画はチェックメイトじゃないのか?
そうですかね。あ、ちょうどチェックメイトですよ。
あ?じゃあここて…そんなとこにビシップあったのか!?
ええ。あなたはどこへ動かしてももう逃げ場はないです!
くそっ。これで三敗だな。
戦闘は強いのにボードゲームは弱いですねぇ。
くそっ、四戦目だ。
まだやりますか。
当たり前だ。勝つまでな。
飽きない方ですねぇ。それより、真面目な話になりますが。
ああ。
そろそろあの人をこのゲームに招待しますか?
お前はこの計画をゲーム感覚で楽しんでたんだな。お前が一番狂人だよ。
いえいえ楽しんでなんか。平和の為です。最後には笑えなくては。
なんでも構わんが…。で、あいつを招待する、と?
ええ。
あいつを招待して誰を消してもらうんだ?巫女か魔法使いか?
いえ、できれば…
一番情報を持ってる吸血鬼か?
Exactly、その通りです。
あいつの現在地はわかるのか?
おおよそ。
そうか。
チェス盤の上では銀のルーク(城)を金のクイーン(女王)とナイト(騎士)が狙っていた。
銀のルーク(城)に逃げ場はない。
■Touhou Hourisen 23
ー紅魔館エントランス・フランドール組ー
フランドールはかすかに聞こえる足音と会話を察知していた。聞き覚えのある声や初めて聞く声。それらは徐々にエントランスに近づいて来ている。
「なにか来てる」
アイラもその声を察したようで、シズマに警告をした。
「なにかが?」
もちろんその警告にはシズマは反応を示した。正直なところフランドールはアイラにその声を嗅ぎ付けてほしくはなかった。もしかしたら魔理沙達が奇襲を狙っているかもしれないからだ。
「うん。人の声…フランちゃんも聞こえるよね」
アイラの質問にフランドールは少し固まり、顔を横に振った。明らかに嘘をついているのがバレバレで、アイラにその嘘は通用しなかった。
「嘘だ」
「……」
作品名:東方宝涙仙総集編其の<弐拾壱(21)~其の弐拾五(25)> 作家名:きんとき