Wizard//Magica Wish −14− 最終回
………
3人は、ミサの倒れている場所へと移動した。
ミサは気絶をしている訳ではないが、ぐったりと仰向けに倒れている。
既に身体を起こすまでの気力が無いのだろう。
「……負け…たわ…あなたの勝ちよ…ウィザード…」
「…ミサ…」
「その…懐中時計の中に、…私の…ソウルジェムがしまってある…」
ウィザードは懐中時計を開いた。
時計は止まっている。
その時計の部分を開けると、銀色に輝くソウルジェムが収納されてあった。
ミサの言うとおり、穢れは全く見られない。
「けど…どうするの…かしら……あなたがそれを吸収したところで……結末は…なにもかわらな…うっ…げほっ…!」
「っ!ミサさんっ!」
ふと、ミサが胸を押さえ込み吐血し始めてしまった。
まどか は居ても立ってもいられず、ミサに寄り添った。
「自分の身体を犠牲にして、何度も何度もソウルジェムの魔法により再生してきた後遺症ね、いくら魔力で修復しても、その身体という個体に限界がきているのよ。彼女はもう、助からないわ…」
「じゃ、じゃあミサさんはもうどちらにしても、後がないってこと!?」
「そうだ…そのために…俺が必要…うっぐ…」
「っ!操真ハルト」
「ご、ごめん…ははっ」
ウィザードは身体のバランスを崩し、ほむら の肩に手を置き、なんとか自分の身体を支えた。
ウィザード自身にも限界が近づいていた。
「さぁ、はじめよう…その前に、ミサ…一つ聞きたいことがある」
「…な…なに…?」
「俺は…戦っているとき、いやずっと前から、お前の過去…いや、ミサ自身の始まりの時を見ていた。その理由が俺にはどうしてもわからない…」
「簡単よ…あなたが、ソウルジェム…ただ、それだけの理由よ…」
「なんだって?」
「別に私に限ったことではないはずよ…望めば、その子達の始まりの時だって…見ることが出来る筈よ…」
「…そっか…」
自分が改めて人間ではないことを思い知らされた。
けど、そんな中、一つだけ後悔してしまったことがある。
何故、その事をもっと早く気付けなかったのだろう。
もっと早く気付いていれば、…別の選択肢があったのかもしれないのに。
「悪かった…もう少し…俺たちが出会うのが早ければ、こんな結末にならなくて済んだかもしれない…」
「それは違うわ…ウィザード」
「え?」
「結末は…一つじゃない…あなたが進んだ道は……たった一つの道をただひたすらと歩いて行った結果。まだ…あなた自身には沢山の選択肢があるのよ…」
「結末は…一つじゃない?」
「世界は…沢山の道で繋がっている……いずれ、あなたにもわかる時が来る筈…」
「ミサ…」
「さぁ…時間よ。あなたの思うように…始めなさい…」
ウィザードは懐中時計からソウルジェムだけを取り出し、懐中時計をミサの胸元に置いた。
そして指輪を右手に装着する。
「お別れだ…ミサ」
「…私を…解放するのね…魔法少女という因果から……後悔するわよ?」
「構わない……それに」
「…?」
「雄吾と…同じ場所へと…導くのは、俺の役目でもあるんだ…」
「っ!!」
「色々悪いことばっかやってきたと思うけど…天国に…行けると良いな」
「『リボーン』プリーズ!」
「……っ…ふぅっ…うぅぅ…っ!!…あなたは…どこまでお人好しなのっ…!!」
ウィザードの魔法が発動し、ミサのソウルジェムが光輝く。それと同時に周りが真っ白に染まり上がっていく。
作品名:Wizard//Magica Wish −14− 最終回 作家名:a-o-w