二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
ゆーとぴあ
ゆーとぴあ
novelistID. 43501
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夏の思い出

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「暑いなぁ…」
「当たり前だろ、もう夏だ」

部屋のエアコンは起動しているが、まだ室内はむしむししている。
近くにあったチラシで風を扇いでいる相手の姿をじっと見詰めていた。

此奴と初めて出会ったのは高校時代、弟と仲が良かった男の友人として紹介された時だった。見た目はヘラヘラしていて、顔は良いのにファッションにセンスがなく、実際中身もあまり見た目と変わらなかった。
ただ、他の人とは何処か違っていた。
人付き合いが得意じゃない俺は、今までろくな友達も居なかった。くらな仲良くしようと努力しても生意気だの、可愛くないだの言われて相手にされないでいた。
でも、此奴だけは、そんな俺に気づいてくれたのか分からないが、何を言おうと優しく接してくれた唯一の人だった。
だから、好きになったんだ、仕方ない…。

シャツの袖で顔の汗を拭う仕草が何処か色っぽく見えてならない。
その横で俺はペットボトルに入った水を飲みながらソファに座っていた。

「あ、それ俺にもくれへん?」
「……あ?」

ペットボトルから口を離した瞬間、横取られた。
俺が口をつけて飲んでいた事もお構いなしに、当たり前のように間接キスをした。俺にとっては心臓にも理性にも悪い。

此奴は昔からこうだった。
俺が好きだと言っても、友達だとしてしか受け取らない。何度も勇気を出して手を握ってみても、ヘラヘラ笑いながら楽しんでいるだけ。どれだけアピールしようとしても、此奴は全く気付くような雰囲気を出さない。
最初は、気付かないふりか、ただのバカかと思っていたがなんとなく此奴の事が分かってきた。
実際、本当に俺の気持ちには気づいていなくて、ただの可愛い後輩だと思っているようだった。
最近は俺もこのままでもいいと思ってきていた。
告白してきまずくなるよりは、このままの関係を続けている方が幸せな気がしてきていた。そもそも、告白したところで此奴自身が気づかないんだ。
それでも、俺が此奴が好きなことにかわりはない。

「…おい、返せよ」
「えー、けっちぃなぁ…」

無理矢理ペットボトルを取り返す。でも、もうこの水を飲むことなんてできない。そんなこと、想像しただけで爆発してしまいそうだ。

───どうしよう、顔が見れない…

「………」

暫く俯いたまま黙っていると、急に部屋が静かになった事に気が付き、気まずいと思っていると、不意に片肩が重くなったのに驚く。相手が肩にもたれ掛かってきて、そのまま寝てしまったようだった。
汗ばんだシャツと、口を少しあけて寝息をたて、幼く見えるその寝顔に胸の鼓動が一気に高まっていった。

───少しだけなら……

そう思ってそっと顔を近づけた。

相手の頬に震えながらも目を瞑りながら口付た。鼓動が今までになかった程高まっていく。もしかしたらこのまま死ねるかもしれない、そう思う程に胸がいっぱいになった。

───本当に、このままでいいのか…?

なんとなく自問をしてみる。
今はこのままでも十分満足しているが、そのうちこの気持ちが自分でも押さえきれなくなってしまうかもしれない。そのせいで相手を傷つけて、もう元の関係にすら戻れなくなるかもしれない。そう思うと、嫌でも涙が出てきてしまう。
軽く涙を手で拭い、もう一度キスをした。今度は唇に…。
唇を離した瞬間、驚きで目を見開いた。

「……ロヴィ…?」

何が起きたんだと言う顔で俺を見詰める。

───ああ、もう駄目だ…

そう感じた。
すると、不思議そうに見詰める表情が変わった。

「ロヴィ?…何で泣いとんの?」
「…え?」

知らない間にもう、涙が止められなくなっていた。

「……ごめん」

小さくそう呟くと、急ぐようにして立ち上がり、ドアへと早歩きで向かった。が、途中で引き止められてしまった。

「待ってロヴィ!」

そう言いながら俺の身体を後ろから抱き締める身体が小さく感じた。いつからか、背丈まで差がついてしまっていたなんて、知らなかった。今となっては、もう関係ないけど。

「アントーニョ…離せよ」
「嫌やっ!」

抱き締める力が強くなった。
そんなに俺のことを引き止めないでいて欲しい。そんなことされたら、

───期待するだろ…

俺は知っている。此奴が優しいことも、バカなことも、俺を可愛がっていることも。だからこそ、余計に辛い。

「……お前が好きなんだ…だから、離せよ…」

震えながら出た言葉は最後の告白。
もしかしたら、何時ものように友人としての意味でとらえるかもしれない。それでも、もう俺にとっては限界だったんだ。このままもう会わないでそれぞれ違う人生をおくったほうが俺にとって一番いい。そのうち良い夏の思い出にでもなるだろう。そう思った。

「ロヴィ…」

それでも離さない。何故そこまで引き止めてくれるのか俺には分からない。どうせなら、気持ちが悪いとでも言って引き離して欲しかった。

「俺…ロヴィーノと居りたい」

やっぱり思った通りの反応が返ってきた。此奴には俺の気持ちは届かない。どうせ俺が怒って部屋を出ていこうとしているとでも思ってるんだ、とわざと自分にとってマイナスに考えた。
しかし、振り返った瞬間、

「いいから離せ…っ!」

真っ赤で今にも泣きそうな顔に驚いた。

「俺、ロヴィと居りたい!…ロヴィが好きやっ!」

震える声で必死に叫ぶ。こんな姿は見たことがない。何時もヘラヘラしてて鈍感な、俺が知っている此奴ではなかった。

「トーニョ…」
「俺も…ロヴィが、好き、だから…っ!」

嬉しさからか、驚きからかも分からず、相手の言葉を最後まで聞く余裕もなく、唇へ2度目のキスをした。
口を離すと、相手は照れながらも嬉しそうに微笑んだ。

「本当か…?」

未だ不安でそう相手に問い掛けた。すると、何時ものヘラヘラとした笑顔で

「当たり前やん」

と、答えた。
俺へ軽く体重を掛けて抱き締めると、相手の汗の匂いが自分の匂いと混じった匂いがした。いつの間にか首の後ろに腕を回され、少し赤らめた顔で、

「ほな…もう一回、キスしたって?」

───喜んで…
作品名:夏の思い出 作家名:ゆーとぴあ