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そこまで違和感はないだろうと入れ替えてみたら

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思わず駆け出しそうになる足を抑え、それでも足早になってしまいながらも人目を避けるために路地裏へ入り込む。
――樹の中の樹 大樹の中の大樹 我が名において聞き届けよ
適当な空き缶を供物として地面を蹴り、浮いた身体を近くのビルの屋上へ、そうして足を着けて漸く一息吐いた。
「さすがに不審と思ってもここまでは追って来られねえだろ」
じわり、と滲んだ額の汗を袖で拭う。
「危ねえ所だった……」
言っておいて、しかし冷静になれば自分の行動に呆れを覚えた。何も慌てて逃げることはなかったのだ。
「あいつはオレのことも魔法も知らねえんだから適当に言い訳するだけで良かっただろ」
焦り過ぎたと自重して、それにしても、と思考を切り替える。
 滝川吉野は実際に見ると何処にでもいそうな一般人としか思えない、気の強い愛花や葉風に振り回されていそうな印象だった。彼はとんでもない悪人だがその自覚は欠片もなく、一見すると無害そうだから尚のこと性質が悪いのだという。真広とって彼は初対面で、これから先も関わることのない人間だから真実は分からないままになるだろう。
「ま、愛花の彼氏だったっていうなら無害そうでも悪人の方が釣り合いも取れるか」
ここで彼について考察しても詮無いことだが、誰もいないのを良いことに独り言ちた。

「愛花ちゃんと僕の関係を知ってるなんておかしいな」

 独り言である筈のそれを聞かれているとは思いもせず。
「それに『魔法』とも言ったね」
まあそんな力でもなければこの屋上に一瞬で飛べなかっただろうけど、と振り返った先にいる彼は事も無げに言う。
「僕のことを悪人とか言うのは愛花ちゃんか葉風さんくらいだけど、葉風さんは僕と愛花ちゃんのことを知らないし、愛花ちゃんが話すとも思えない」
真広が声を失っている間に彼は続けた。
「あと『彼氏だった』って過去形で言ったのも気になるな」
 何故この男はこんなに冷静なのだろうか、それ以前にどうやってこの短時間にここまで来られたのか、と怪訝な表情を隠しもせずにいれば、彼は自身で投げた問いに解答を見出したらしく、ああそうか、と呟いた。
「きみは『はじまりの樹』の関係者だね? しかもその力量ならとけっこう高い地位にいるんじゃないのかな」
「……!」
疑問形で言うがそれに対して彼は確信を得ているらしく、実際的にも事実だ。
「……確かにそうだけどよ、何でそんなことが分かる?」
今更とぼけてもどうにもならないと肯定して見せれば、彼は少し考える素振りをする。
「イレギュラーなことが起こってるのかな、本当ならこういう形で僕が名乗るべきじゃないんだけど……」
まあいっか、とあっさり答える選択をする彼を真広は警戒して睨んだ。
「はじめまして、僕は滝川吉野」
それは知っている、と口にしようとして
「そしてきみ達が『絶縁の樹』と呼ぶものの意を受ける者 その力と真実を担う者」
放たれた言葉に絶句する。
「さしずめきみ達なら――――」

スゥ、と挙げられた手から現れる巨大な剣

「『絶園の魔法使い』とでも呼ぶ者、かな」