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【就鶴】懐中に抱きしは日の輪

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河野の隠し巫女の存在が公の場に浸透せし前から、我はあの者の存在を知っていた。
ここ瀬戸内の海に住む者共の情報は、我は全て知っているが故のことであった。
その頃の巫女は天の邪鬼で……家族を失った寂しさに耐えられずにでの行動である。
一度会いに赴いた際、すすり泣く声と対面した時の緊張で強張る顔に目立つ赤く腫れた目はそれを記していた。
我と境遇が少し似ている部分が合った。だが違うのは、巫女が愛されていたということだ。
家臣に心からの同情を寄せられ、大切に匿われて育つ巫女。アレは、間違いなく我と逆方向の道を歩くのだろうと既に我は予知済みであった。

そして数年が経ち、思っていた通り巫女は明るい無垢な少女に育ち、多少なりと日ノ本に動揺を与えたが、直ぐに皆、巫女に惹かれ始めた。
巫女は確かに成長したが、我と二人の時は途端に静かになる。
本性と周りにみせる顔が違うと云う訳ではなく、根本的な所は変わっていない。
本人曰く、生理現象らしい。
「私、予知は得意ですが、されたのは貴方だけでした」
巫女は、ぽそりとそう呟く。
「我を視たのも貴様だけよ」
「当たり前です、私は先見の力がありますから」
ふざけた調子で巫女が答える。
「私、生まれてきて今までとても幸せでした」
唐突なその台詞に、我は得に動揺しない。
変わりに巫女をそれとなく押し倒す。
「わわっ、毛利さん、私には宵闇の羽の方がっ!」
「知らぬわ、今直ぐにでも既成事実を作ってやる」
「突然男にならないでくださいっ」
その内、どちらも話さずじまいで押し黙る。
「………醜いぞ」
「……?」
「水死するとな、肺から胃に水が入り、本人かどうか定かでなくなる程太る」
「うわあ……それは嫌だな………」
「所詮この世は現よ。童話のように事は進まぬ」
鼻で笑う。一息吐く。
「腐敗しままに逝くのか、白鳥」
途端、泣きそうな顔になる巫女。そのような顔をするならば、それより。

「足掻きながら生きよ、鶴姫」

それが一番の得策よ。






天命背きは、天駆ける白鳥
夢みるは日ノ本、溶かすは氷の花のみならず
いつか焦がす程強く。次は私だと羽を散らし。