[SS]オリジナルペルソナ3 1
大好きな母が私の名前を呼んでいる。
「起きてるよ。お兄ちゃんは寝てるけど。」
そう言いながら隣の兄を見る。
いつもの黒っぽいような、青っぽいような瞳は今は閉じられている。
「もうすぐ着くから、起こした方がいいかな。」
母の隣に座っている父が車を運転しながら言った。
「それもそうね。星奈、悪いんだけど星佳を起こしてくれる?」
星奈は元気よく「うんっ!」と返事すると、隣にいる兄…星佳を起こしにかかった。
「お兄ちゃーん、起きて~。起きてってば~。」
「……何?」
星佳は無愛想に返事をする。
一方、星奈は無邪気な笑顔で、
「やっと起きた~。あのね、もうすぐとーちゃくするんだって。新しい町、どんなとこかな?楽しみだね~。」
と言った。
「…うん。」
まだ少し眠いのか、だるそうに、少し嬉しそうに答える。
「あっ、見て見て!お星さま!すっごくきれいだよ~。」
相変わらずの笑顔で星奈は言った。
よほどきれいなのか、車の窓から身を乗り出している。
「星奈、危ないからちゃんと座りなさい。」
苦笑しながら母は言った。
「は~い…」
少し罰が悪そうに返事をする。
「この大きい橋を渡ったら着くから大人しくしてなさい。」
柔らかい笑顔で母は言った。星奈はこの笑顔が大好きだった。
母が笑うと家族みんなが明るくなる。
母が落ち込んでいると家族全員で元気付ける。いつも明るくて楽しい日々。
ずっとこの日々が続くと思っていた。
カチ……カチ……カチ
『0時です』
車のラジオからの時報だ。
ゴーン…ゴーン…
どこからか鐘の音が聞こえてきた。
それと共に鼓膜が張り裂けそうな爆音
「きゃあっ?!」
「…くっ?!!」
星奈と星佳はうずくまった。
車が大きく揺れる。
そして二人はようやく周りの状況を確認した。
「いぃやぁあああああっっ!!!!!」
星奈の悲鳴が上がる。
星奈と星佳の前にいたはずの父と母
はもうそこには居なかった。二人が座ってた場所にあるのは石像。
その形はお化け屋敷とかで見かける棺桶にそっくりだった。いや、棺桶そのものだった。
「うわぁああああああああああっ!!」
星佳の隣で星奈が泣き叫ぶ。
星佳は冷静だった。
車の外の様子を確認できたほどに。
「星奈っ、車からでるよ!」
火の竜巻が向かって来るのが見えた。
だが、星奈は恐怖に陥り動けない。
星佳が無理矢理星奈の腕をつかんで外に引っ張りだした。
そして全速力で走った。竜巻に巻き込まれないように遠くへ。
星奈も泣きながらついてきた。
車が見えなくなったところで走るのを止めた。
「ここまでくれば…」
「お父さんとお母さんどこぉ……」
星奈はずっと泣いている。
周りには助けを求められるような人もいない。星奈と星佳しかいない。
遠くの火の海を見ていた星佳は、こちらに向かってくる黒い塊に気づいた。
(あれは………?)
「お兄ちゃん、どうしたの?」
目に涙をためながら星奈は星佳に問いかけた。
「あれ…………」
黒い塊を指差す。と同時に
グオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!
獣のような叫び声。飛び散る血。砕ける様々な車。
黒い塊が暴れながらこちらに向かってくる。
二人はもう死ぬんだと覚悟した。
その時、黒い塊とは別のものがこちらに来ていることに誰も気がつかなかった。
「・・・・・っ!!」
二人は白い光につつまれた。
2009年4月
私は再びこの町に訪れた。
作品名:[SS]オリジナルペルソナ3 1 作家名:みちる