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ゲバルトプリキュア!

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カレヒトを撃退した一人と一匹は今、風蘭の自室にいる。




ビリィのような生物が、人前で話すわけにはいかない。


それに風蘭は、とにかく家に帰りたい気分だったのである。



「改めて自己紹介だ。俺はビリィ。
ポジティブ王国からやってきた、妖精だ」


「ポジティヴ・オーコクゥ?ヨウセイィ??完全に理解の外だよぉ???という他ないよおぉぉ????」


聞き慣れない言葉に、風蘭は大袈裟過ぎる動作で四度首を傾げた。


「ポジティブ王国はこことは少し違う次元に存在する世界、つまり異世界の王国だ」


「そんな非ぃ科学的なオカルト話には興味ないよおぉぉっっ!!っって言いたいとこだけどもう順応しちゃったよおぉぉっっ!!」


さっきまでプリキ○アに変身し、超常的力を操っていたのだ。


元々順応力が異常に高い彼女は、その程度では驚かない。


「黙って聞いてろ!!そこには俺みたいな妖精がたくさん暮らしてるんだ」


「ええぇえぇっっ!!?こんな醜悪なのがいっぱいいるのおぉぉ!?想像するだけでぞっとするという他ないよおぉぉっっ!!」


「そ、そうか。そう言われちまうと何もいいかえせねえや…。安心しろ俺がこんなってだけで、多分可愛いのが大半だから」


予想外の攻撃に、ビリィの皺だらけの顔が一層クシャクシャになった。


「そうなんだあぁ。危うく大群ビリィィが畑から頭部を出してる光景を想像しちゃうとこだっ……うあうぅ!!激しく吐き気をもようしたよおぉぉっっ!!」


「もうやめてくれよ。これ以上言われたら生きてけねえよ」


「えぇ?どこか具合悪いのぉ??」


「…とにかく。話を続けるぞ、どこまで話したか…そう、妖精の国ポジティブ王国は平和だった。しかし、ある日突然侵略されてしまったんだ」


「侵略って、何奴にぃ?何故にぃ??」


「敵はあのカレヒト達を送りこんできて、前線に出てこなかった。しかしカレヒトには意思というものがない。だからそいつらを操っている奴が、必ずいる筈だ」


ビリィが、苦い顔で言う。
その時のことを、思いだしてしまったのだ。


「ふぅん?ボスなのにちゃんと仕事しないのおぉ??怠惰という他ないよおぉぉ???」


「おそらく、わざわざボスがでる必要がなかったんだろう。敵は、強かった。兵士である妖精には戦闘力もたいしてないしな」


「精神と時の部屋で修行したらよかったのにぃ。あと半殺しにしてもらったりとかぁ。あとはぁ…」

「女王様も戦ったが、捕縛されてしまった。そして、奴らはすぐに撤退した。一体女王様に何をするつもりなのか…」


「一人の女の子の為だけに戦ったってことぉ?きっと敵はロマンチストな男の子に違いないよぉ??」


「お前は伝説の戦士、プリキ○アとしての力を手にした。だからあのカレヒトどもを倒し、女王様を救ってくれ」


正義の名のもとに、悪と戦う。


全てのプリキ○アの、使命。


しかし。



「………やだ、よぉ??」


「!!嫌って、どうしてだ」


「そんなことしても、百害あって一利なしという他ないよぉ?」




「…そうだな、いきなり見ず知らずの他人のために命賭けろって言われてんだもんな。でも、さっきはあんなに嬉々として戦ってただろ?」





風蘭は破壊衝動のまま、敵を倒した。


その姿を間近で見たビリィが、彼女の反応に疑問を感じるのは無理もない。


「あれは…違うよおぉ」


「なんだよ?」


「私じゃない私が、勝手にやってるんだよぉ…傀儡という他、ないよぉ…」


「…お前の意思じゃ、ないってことか?」


消え入りそうな声を出す風蘭に、ビリィも異変を感じる。


「私の中の凶暴な私が、いきなり暴れたがるんだよおぉぉ……。私はぁっっ……」








「ただ……普通の人生を送りたいんだよぉ……」



「…プリキ○アってのは、女の子しかなれねえ。しかもその中でもごく限られた奴しかな。俺だって、子供を無理矢理戦わせたりなんてしたくねえ。だがこんな俺にも守りたい、大切な家族がいるんだ。だから簡単に引き下がれねえ。土下座してでも、切腹してでも。お前が協力してくれるまで、絶対諦めねえ」


「…か、ぞくぅ?」


「ああそうだ。お前にもいるだろ、親とか兄弟とか」


「親は、いるよぉ…でも……」


「なんだ?」


「…今、出かけてるんだよぉ。だからちょっとだけ、寂しい、かもぉぉ……」


「…このままじゃ、俺の家族も。他の妖精たちも、みんな死んじまう。俺の糞みてえな命で解決するなら、喜んで差し出すさ。だが」


ビリィは、土下座した。


「どうにも、出来ねえんだ。…俺一人じゃ」


「……ビ、リィィ??」


「頼む。どうか、力を貸してくれ」








「……ちょっとだけなら、いぃよおぉ……」


「本当か!?助けて、くれるんだな!」


「……単なる気まぐれだという他ないよぉ?」


「気まぐれだろうが構わねえ。ありがとな風蘭」



ビリィが言い終わると同時に、インターホンの音が響いた。








「…誰かきたぞ。出ないのか?」


「やだよぉ。私はもう、世間のはぐれものなんだよぉ。ビリィィがでたらぁ?」


「俺みたいなのが人前で喋ったらどうなるか、お前のお陰でよーく理解したからな。…出られるわけねえだろ」


あのときの風蘭の絶叫は、ビリィの脳裏から消えることは永遠にないだろう。


「風蘭ちゃん、居ないのー?」


「……この声は、聞き覚えがあるよぉ?澪ちゃん、だぁ??私を始末しにでもきたのかなぁ」


「始末ってなんだよ。お前なんか、悪いことでもしたのか?」


風蘭は、ばつが悪そうにはねた髪を弄くっている。


「今日、学校で人を、消しちゃったんだよぉ。今までだって、六十一人もぉ。だからぁ…」


「普通、人間は消えねえよ。どういうわけか、お前は無意識のうちにカレヒトの幼体を始末していたんだろう。人間に完璧に紛れ込む奴らを見分けられるのは、変身したプリキ○アと妖精だけなんだがな」

















「…私、人を殺してないの?」








「?ああ、そうだ」















「友達、作っていい?」








「当たり前だろ」














「……生きてても、いい?」










「……馬鹿なことばっか、聞いてんじゃねえよ。お前は、凄え奴なんだ。世界に必要な人間だ。だからもっと自分を誇りに思えよ」



























「…そっか。私、あのとき死ななくて、良かったよ」





「…友達、来てるんだろ」







「…うん」






「会いにいけよ」








風蘭は一瞬躊躇う仕草をした後、


部屋を飛び出した。



「…そうするよおぉ!!」













「……どうしてこんな奴が、とも思ったが。なるほどな。…頼むぜ風蘭。お前は俺たちの…希望なんだ」

作品名:ゲバルトプリキュア! 作家名:NOEL