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夜、雨が降っている。
俺は、林の中を何かから逃げるように走っていた。
別にその何かが俺を襲っている訳ではない。そんなものは存在しない。
俺は、今の自分から逃げていた。

次第に雨は強くなる。
風が吹き遠くから轟音が響き渡るようになった。
おそらく雷だろう。

「はっ！はっ！はぁっ！」

雨は容赦無く俺の身体に叩きつけるように降り、靴は既にびちゃびちゃだ。
いつの間にか泥だらけになっており視界が悪くなる。

次第に身体の感覚が薄れていく。
雨が降る音が遠のく…視界がぐらつき、頭が真っ白になっていく。



目を閉じれば、きっと俺は消えてしまうだろう。
この、自然が生い茂る林と一体になり土に帰るであろうか。
それとも獣に食べられその血と肉に化してしまうだろうか。


どちらでも良かった。

俺は、この世界が嫌いだった。



「うっ……あぁ…」



考えるより先に体力が限界だった。
俺は足を滑らせ倒れてしまった。

もう立ち上がる気力すらない。

これで終わりなのか？


まぁ良いか。






これで…終わってしまうのなら…。




−あきらめないで−



「えっ…？」




現実であろうか？
目の前にまばゆい光が広がっていく。
その光の中から俺へと差し伸べられる小さな手が一つ。





俺は、無意識にその手を掴んだ。


すると、光が辺り一面に広がっていった。




そのまま…俺は意識を失ってしまった。







・
・・
・・・




「…またあの時の夢…か」

最近、よく見るようになった夢だ。
俺は今でも鮮明に思い出せるあの光景に疑問を持ちながら身体をベッドから起こした。
今日も快晴、窓から入る日光が気持ち良い。
俺は何気無い気持ちでベッドの横に置いてある時計を見た。

「は？4時半って…早起きにも程があるだろ」

そう、俺は珍しく朝早くに目を覚ましてしまったのだ。
こんなに早朝に起きたのはいつ以来であろうか。
このまま二度寝していつもどおり起きるか…いや、今また寝てしまえば遅刻決定だ。
そう考えた俺は既に次の行動を考えていた。

「せっかく天気も良いんだし、ちょっと散歩でもしようかな」

俺は部屋のクローゼットから普段着を取り出し手鏡を見ながら寝癖を治す。
おっちゃんを起こさないように廊下を歩き、外へ出る。
小鳥が鳴く声や川の流れる音が聞こえてくる。
朝の散歩には最高の環境だ。

「ふぃ～…気持ち良いな。やっぱこの村の風景は落ち着くな」