よつばとおんなのこ
美奈は体が弱くすぐ熱を出すため、外にも行けず家の中で暮らしていました。
いつも同じような生活をしているので最近は本を読んでもゲームをしても飽きてしまいます。
そんなときはいつも外を眺めて、遊んでいる子供たちを見ていました。
そんなある日、美奈が玄関まで新聞を取りに行くと、女の子が三人いました。
一人は近くに住むよつばで、さらにそのお隣に住む恵那もいました。
以前引っ越しのあいさつに行ったときに会ったことがあるのです。
もう一人は知らない子でしたが、みうらという子だと恵那が紹介してくれました。
三人はこれから恵那の家で遊ぶそうで、美奈も誘われました。
しばらく考えていましたが、家の中なので思いきって一緒に行くことにしました。
恵那の家の中に入った美奈は、キョロキョロと周りを見渡しました。
「何してるのー。こっちだよー」
恵那の部屋にいくとお菓子とジュースがあります。
美奈は三人からいろいろな遊びを教わり 、大変楽しい一日を過ごしました。
それから美奈は、よつば、恵那、みうらの三人と一緒に遊ぶようになりました。
そしてまたある日、美奈は恵那とみうらが通う小学校へ遊びに行きました。
今は夏休みなので、校庭が解放されています。
三人と遊ぶようになってから美奈も徐々に体力がつき、外に出られるようになっていました。
そして三人が自転車に乗っているのを見て美奈も乗りたくなり、頑張ることを決心しました。
小学校への行き帰りの途中に小さな池があります。
この池は水がきれいでそれほど深くないので、暑いときには子供たちが普段着のままで池に入って水遊びをしています。
よつばたちも服を着たまま水遊びを始めましたが、美奈は水に入らずに三人が遊ぶのを見ていました。
水から上がるとみんなびしょ濡れです。
一体どうするのだろうと美奈が見ていると、三人は草の上に寝転び服を乾かし始めました。
真夏のお昼時の太陽が服をみるみる乾かしていきます。
服が乾いたあと、四人は恵那の家に行って遊びました。
そしていつしか夏休みが終わり、恵那とみうらは学校に通い始めました。
美奈は同い年のよつばと毎日遊んでいました。
美奈は夏休みからさらに元気になり、このまま無理をしなければ来年小学校にも行けるそうです。
美奈はよつばに聞いてみました。
「来年はよつばちゃんも私も小学生だね。よつばちゃんは大人になったら何になるの?」
「よつばはぎゅうにゅうやさんになる。みなはなんになる?」
「私は大人になったら保母さんになるの」
「なんでほぼさん?」
「私もまだ元気だったときは保育園に行ってたの。そのときの先生がすごく優しくて、私もそうなりたいと思ったからだよ」
「ふーん、わかったー」
それから数日が経ち、ちょっと遅い昼食を食べた美奈はよつばの家へ遊びに行きました。
ところが出掛けているのか、呼んでも誰も出てきません。
仕方なく、美奈は小学校へ行ってみようと思いました。
その日は九月にしては大変暑い日でした。
美奈は汗をかきながら 、道を歩いて行きました。
その途中、あの池がありました。
前は池に入りませんでしたが、実は美奈も入りたかったのです。
「これだけ暑ければ大丈夫だよね」
美奈は服のまま池に入り、思う存分水遊びをしました。
池から出ると服がびしょびしょです。
美奈はあのときの三人のように、草の上に寝転び服を乾かそうと思いました。
ところがいくら暑いとは言え、真夏の暑さとは違います。
しかも陽は傾きかけて、風も出てきました。
「よつばちゃん、もう帰ってきたかな。早く乾かないかなあ」
しかし、濡れた服と風が体熱をどんどん奪っていきます。
「もう......おうちに帰らなくちゃ......」
美奈は起き上がろうとしましたが、気を失ってしまいました。
しばらくして池のほとりに掲示板が立てられ、そこによつばが描いた美奈の似顔絵が貼られ、花束が置かれました。
今も花束が飾られているそうです。
――――私は大人になったら保母さんになるの――――