東方竹取伝
=====月=====
この場所は滅多に使われることのないロケットの発射場。一人は発射のための準備か、忙しなく動き回り、もう一人は監視するかのように竹型ロケットを眺めていた。
「まったく、蓬莱の薬を飲むなんて……大罪だというのに、正気の沙汰とは思えないな」
この竹型ロケットは、ある罪を犯した者を地上に送るための物。現在中にいるのはとある少女が一人だけ。
(フフフ、遂に地上へ行けるのね。一体どんな生活なのかしら?楽しみだわ)
「こんな時にも笑ってやがる……」
思わず口角が上がってしまったのを気味悪がられるが、少女に気にした様子はない。
「準備完了。いつでも飛ばせるぞ」
「よし。さっさと終わらせよう」
特に合図をするわけでもなくいきなり発射のスイッチを押す。ゴゴゴゴと大きな地響きを立てて飛び上がる。
宇宙を飛ぶ間にも少女は笑う。
(地上に行ったらまずなにをしようかしら?早く着かないかな)
これは月で罪を犯した少女、蓬莱山輝夜と、幻想郷の巫女博麗霊夢が出会うよりも、もっと昔の話。