NZごっこくらぶ 「そうだ!投票に行こう!!」
国民もネオ・ジオンの協力的立場の他のコロニーも驚愕したが、参謀たちは驚かなかった。
「コロニーと地球との関係が安定してきたら、軍備は縮小していくべきだと、私は考える。そして、人民を収めるのは、人民の意志によって選ばれた政治家たちが行うのが最善だと、以前から考え、参謀たちとも話し合いを繰り返していた。我こそはより良い政治を執り行えると思う者が立候補して、選挙権を有する18歳以上の人民に選出されて、人民の意向を反映した政治を行って欲しい」
コロニーのあらゆるところに映し出されたシャアは、総帥職にありながら、いつもの派手な総帥服を身に纏っておらず、シックなスーツで民主制移行の経緯を演説した。
それから半年は、スイートウォーターだけに留まらず、あちこちがざわざわと落ち着かない状態となった。
シャアとアムロの子供たちであるディアとレオンも、スクールで色々と訊ねられる事態となった。
「お父様のお志は素晴らしいものがあると思いますけど…」
「僕たちの都合も考慮して頂けたら…」
「とは言っても、お父様が心底配慮なさるのは、お母様に関してだけだって事、重々承知していますけどね」
そういうと、双子は揃って深いため息を吐いた。
「ごめんねぇ〜。二人の事を考えていないわけでは無いと確信してるんだけど、これ以上の軍国主義は、軍人の権利意識を強固なものにしてしまう危険性が感じられると、お父様に進言したのは私なんだ。二人がストレス過多になってしまうのは実は私のせいだから、お父様を責めるのはよしてあげて?」
帰宅後にリビングで夕食前の軽いおやつを食べさせながら、子供たちの愚痴や相談に乗るのは、幼少時からのダイクン家の習わしになっていた。
その日も、アムロは子供たちにお手製のおやつ ――夕食に響かないようにカロリー抑えめの寒天ゼリー―― を出しながら愚痴を聞き、それに申し訳なさそうに返事を返したのだった。
「お母様の予知であれば致し方ないですわ。実情を聞けば、確かにそうだと私も感じますもの」
「うん。僕も。……暫くすれば皆も落ち着いてくると思うから、それまではこうして、僕たちの話を聞いてくれる?」
「お安い御用よ! ごめんねぇ。そんな事しかしてあげられなくて…」
「「これが、心の癒しなの!!」」
両サイドから抱きつかれ、アムロは両手で大きくなった子供たちの頭を撫でて抱きしめ返した。
選挙の結果は
投票率、驚異の100%!
しかし、無効票扱いとなる記名が多すぎて、選挙管理委員会は、その記名者に政治の世界に入って欲しいと懇願せざるを得なかった。
非立候補者でありながら、驚愕の支持率を出したのは、
言うまでもなく、双子の父親だった。
「君。投票に行った時、誰に投票したんだい?」
ベッドで睦みあいながらシャア愛妻にそう訊ねた。
「ああ。あの、シャアと一緒に取材を受けながらの投票の時?」
「ああ。まさか、私に入れたりしていないだろうね」
「夫婦といえど誰に投票したかは言いません! でも、シャアの名前は書かなかったよ。貴方が大変な思いをして今まで来たことを知ってるからね。でも、人民が支持するなら、その思いを汲み取って、理想的な政治を果たせる人であろう事も知ってるから。悩みや愚痴は遠慮しないで吐き出して。及ばずながら手助けするからね」
「アムロの手助けがあれば、私は千人の兵を持ったと同じくらいの安心感だ。これからも、よろしく頼むよ」
シャアはそういうと、四十路も半ばと思えないほどにすんなりとした体を、深く胸に抱きこんで眠りについたのだった。
明日から始まる、新たなる戦いを乗り切る為に
2013.07.21
作品名:NZごっこくらぶ 「そうだ!投票に行こう!!」 作家名:まお