小説インフィニットアンディスカバリー第二部
第二部 プロローグ
雨が降る。
空を覆う雲はなく、その雨は、蒼天に沈んだ青白い月より降っていた。
雪が大地を白く染め、冬の空気が世界を色褪せて見せている中で、その雨は何よりも美しい。
舞い落ちる雫は、雪にも似ていて、音もなく、重さもなく、ただ、金色の光を放ちながら、しんしんと大地に降りてくる。
「兄ちゃん、すごいよ! 金色の雨だ!」
小さな胸を上下させ、弾ける笑みを白い息で隠しながらヴィーカが言う。
笑って答えてやると、ヴィーカはまだ幼さの残る目を輝かせ、弾かれるように雨の中へと飛び出していった。
雨の中をくるくると舞いながら、全身で金色の雨を受け止めようと、ヴィーカは両手を広げて月を仰ぐ。
男もまた、蒼白の空を見上げた。
以前よりも近くに見える縛鎖の月。
そこから降り注ぐ金色の雨。
それはまるで——
「月の雨だ……」
作品名:小説インフィニットアンディスカバリー第二部 作家名:らんぶーたん