Morning Junky
胸の高鳴りが止まらない。
抱き締められているだけで、こんなにも緊張してしまう。
まるで生娘のような感覚。
これがまた、恥ずかしいのだ。
「何でぇ」
「だって私・・・必要以上にドキドキしてしまうから・・・」
目が潤んで、セクシーだ。なんて、恥ずかしい言葉を浴びせられて鳥肌が立ってしまう。
普段なら失笑で済ませられるようなこと。
彼の前だと、それができない。
「いいじゃねぇか」
「私、普段は性欲がないように生活してるんです。
お友達の皆さんにも、私は淡白で釣れないってイメージを持って貰うようにしているんです。
それが・・・あなたといるときは我慢出来ない・・・はしたないことです」
本当に、恥ずかしいのだ。
いつも通りに、心穏やかに暮らしたい。
私の心を邪魔する人とは、あまり関わりたくない。
でもあなたが好きで。
心を乱される。
「いいだろ、気にするようなことじゃねぇよ。
俺はハシタナイ菊も好きだぜぇ?」
誰か、何とかして。
私の心に平穏をください。
あなたのことをこんなに思う、なかなか会えないことが災いしているのだろう。
また卑猥な言葉を浴びせられて、私は少し怒ってみる。
「も、もうっ・・・それでは私のキャラが崩れてしまいます!
あなただって、人前で仮面がないと困るでしょう?」
彼は変わった人で、人前に出るときは必ず仮面をつける。
友人たちには彼は嫌われていて、仮面野郎だの何だの口汚く罵られているが、彼は全く気にしていなくて。
私の方が気にしてしまうほどだ。
「・・・・・・あ〜、確かに困るかもしれねぇなぃ。キャラが崩れるってとこではな」
「そうでしょう?仮面の男キャラが崩れるのはまずいでしょう?」
私は少し勝ったような気分になって、彼を畳み掛けようと口を開いた。
その瞬間に唇を奪われて。
声を失った。
「でもな、菊」
「・・・んっ・・・は、はい」
「今俺は仮面をつけてねぇ。人目につくところでもねぇ。お前もキャラ崩しても、問題ないんだぜ?
菊よ」
悔しい。理屈が通じない。
私は甘く痺れる唇を指でつねって、彼を見つめた。
「・・・むちゃくちゃです・・・」
どうしてこんなに、こんなにこの人が好きなのだろう。
「崩しちまえ、露け出せよ。
俺は全部食ってやるぜ」
彼の言葉に震え、彼の唇を吸わずにはいれなかった。
お願いですから、私をこれ以上乱さないでください。
私の心を、これ以上奪わないでください。
もしかしたら私の心には、もう奪う余地は残されていないのかもしれないけど。
作品名:Morning Junky 作家名:もかこ@久々更新