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来世できっと・・・2

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物心がついた時からその記憶はあった。
平和な今の世界とは程遠い、多くの巨人がいて、いつも死と隣り合わせだった。
大切な仲間も部下も失い、巨人を全滅させて戦いが終わると、大切な恋人まで失ってしまった。

そんな希望も何も無い記憶だけが俺の中には残っていた。

いざ自分の周りを見てみれば、幸か不幸か前世の仲間であったハンジやエルヴィン、リヴァイ班のメンバーが傍にいた。
しかし、皆は前世の記憶を持っていないようであった。
寂しい、と柄にも無く感じたりもしたのだが、あんな絶望でしかなかった記憶など覚えていない方が良いと考え直した。
それに、前世の記憶が無いというのが嘘のように、皆は何も変わっていなかった。
前世では考えられなかった平穏がここにある、それだけで充分だった。
ただ、一つだけ足りないものがあった。

それは、エレンがいないことだった。

記憶があってもなくてもどちらでもいい。
ただ、もう一度あいつに会いたかった。
前世ではろくな人生を送れないまま、若くして死んだあいつが、今は幸せであることを願った。









その日の俺の気分は最悪だった。
昨夜から降り続く雨音であまり眠れなかったのと、部屋がじめじめして気持ちが悪かった。
そして何より、雨のせいでいつにも増して埃がたっている室内に一番苛立った。
自他ともに認める潔癖症である俺は耐え切れずに朝から部屋のすみずみまで掃除機をかけた。
そのせいで会社に向かう時間となり、朝食も摂らずに出社することになった。
朝のその一連の出来事があってから俺の機嫌はかなり最悪なものであったが、それに追い討ちをかけるようにハンジがうっとおしく付きまとい、仕事の邪魔をしてきた。
(まあそれに対してはハンジを半殺しにすることで憂さを晴らしたが。)
とにかくその日の俺の気分は最悪で、仕事が終わった後もそれは続いていた。
(ツイてない日というのはまさしくこういう日のことをいうんだろうな。)
帰路の途中そんなことを思った。
人込みのなか歩いていくことは好きではなかったが、それが毎日となるとあまり気にならなくなってきた。
人を気に掛けなければ気になることもない、と気付いたからだ。
しかし、その日の俺は違った。
いつもは障害物が無い限り、足元ばかりを見ていたにも関わらず、その日はふと目を前に向けた。
俺は思わず息を呑んだ。
大勢の人間がいるなか、その姿はまるで光っているかのように見えた。
相変わらずでかいな、と心の中で呟き、人知れず笑みを漏らした。

それは俺がずっと願い続けていたものだった。
前から歩いてくるのは学生服に身を包んだエレンだった。
会えるだけでいいと思っていたのに、今ではそいつを抱きしめたくて、キスしたくて、全てを奪いたくなった。
もちろん、行動に移そうとした。
しかし、気付いてしまったのだ。
エレンが前世の記憶を持っていない可能性があることに。
もちろん記憶を持っている可能性だってあるが、それはとても低いだろう。
エルヴィンやハンジでさえ覚えていないのだ。
何故エレンはそうではないといえるのか。
俺は伸ばしかけた腕を下ろした、下ろして歩き始めた。
(これでいいんだ。記憶がないのならそれで・・・前世はあいつにとって良いものではなかっただろう。それを俺と出会ったことで思い出したり、嫌な気持ちにならせる必要はない。)
エレンを引き止めたいという衝動を抑える。
そして、エレンの横を通り過ぎようとした。
しかし、それは突然俺の腕を掴むそれに阻止された。
「リヴァイさん。」
そう呼ぶ声がはっきり聞こえた。
それでも聞き間違えたのではないか、と俺の腕を掴んだままの腕を辿っていく。
そこには、涙を止め処なく溢れさせたエレンがいた。
「ごめ、なさ・・・きお、くなんて・・・リヴァ、さ・・きっと、おぼえ、ない・・・のにっ・・・」
しゃくりあげながら紡がれる言葉に、声に、表情に、エレンであると確信させられる。
「でも・・・っ!覚えてなくて、も・・・すき、なんですっ!リヴァイさ・・・」
「俺もだ。」
俺はエレンを力強く抱きしめた。
もう離れられないように、人込みの中であるというのも忘れてひたすら抱きしめ続けた。
「ずっと昔から、お前が好きだ。忘れられるわけがないだろう?」
俺の言葉でまた涙を溢れさせているのだろう、エレンの顔が当たる胸がしっとりと濡れていくのえを感じる。
「ふぇ・・・リヴァ、さ・・・」
「泣くな、ちゃんと、もっと俺を呼べ。」
エレンだというのはもう分かった。
だが、これが夢でないと未だに確信できなかったのだ。
「リヴァ、さ・・・リヴァイさん・・リヴァイさん、リヴァイさんっ!」
「エレン、愛してる。」
そう言うと、俺は深い口付けをエレンに落とした。
「これからは、お前の傍にずっといる。お前を守る。」
「約束・・・覚えて・・」
忘れるわけがないだろう、と涙の収まってきたエレンに微笑めば、エレンは顔を赤く染めた。
「好きだ、エレン。」
「・・・はい、俺もですっ!」
そう言って笑ったエレンは前世で見た笑顔の何倍も幸せそうであった。
そんなエレンに俺はもう一度キスをした。










〜おまけ〜
「とりあえず一緒に暮らせる家を探すか。」
「え!?まずそこからですか!?いくらなんでも早くないですか?俺達この世界じゃ会ったばかりなのに。」
「なんだ、不満か?それとも俺と一緒に暮らしたくなんかないのか?」
「そんなわけじゃないですけど・・・」
「俺はお前と出会った今、お前とひと時も離れたくないんだ。俺に全て任せればいい。お前は黙って俺に付いて来ればいい。」
「はい・・・あ、でも。」
「なんだ?」
「俺にもリヴァイさんの手伝いさせてくださいね。俺だってリヴァイさんと離れたくないし。その・・・大好きですから・・・///」
「・・・(結婚しよ。)」
「・・・?」
作品名:来世できっと・・・2 作家名:にょにょ