寒い日には…
お題:肌寒い挫折 必須要素:バイブ 制限時間:30分
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寒い日には…
「うっ… さっみぃ…」
サンジは、思わず自分を抱きしめて身震いをした。
ここはグランドライン。
何が起こるか、わからない海。
グランドラインに入ってからというもの、様々な天候を経験してきたが、今回は流石に堪えた。
前の日までうだるような暑さだったのに、朝起きたらサニー号の甲板は、一面真っ白。
今も、空は真っ暗で、大きな結晶の雪がボタボタと降り積もる。
「すっげー!!雪だ雪!!」
「ルフィ、雪合戦しよう!」
「おう!やろうやろう!!」
甲板ではルフィやチョッパー達、年少組がはしゃいでいる。
「ったく、いい気なもんだぜ…」
昨日までは、身体の体温を下げるような料理を作っていたが、急遽考えていたメニューを変更しなければならない。
「とりあえず、温かいスープでも…」
サンジはイソイソとキッチンの扉を開けた。
と、そこには、見慣れた緑の頭。
キッチンに入ってきたサンジに気が付き、ゾロは鋭い目つきをサンジにぶつける。
「おう。さみぃから身体あっためてえんだ。酒よこせ」
しごく、予想できた台詞。
サンジは思いっきり顔をしかめる。
「あぁ!?それが人に物を頼む態度か!?ちったぁ遠慮って言葉をしらねーのか」
「今なんかあったらどーすんだ。俺が寒くて剣が抜けねぇとかいったら困るだろーが」
んなこと絶対にないクセに、と思いながらも、サンジは思考を巡らす。
実は、次の目的地の島への到着日が予想以上に伸びていた。
食糧の在庫も徐々に尽きてきていて、ゾロには酒を多少控えてもらっていたのである。
でも、今日のこの寒さ。
確かに、ゾロでなくても何かで暖を取りたいという気持ちはわかる…
「ったく、しょーがねえなぁ。わかった、倉庫について来い」
まぁ、少しぐらいだったらいいか。
そう算段を立てて、倉庫へと向かった。
ゾロは、大人しくサンジの後ろをついてくる。
念願の酒が手に入れられるのだ。
ここで一悶着、は賢明ではないと思ったのだろう。
「ったく、なんだってこんな寒みぃんだ…」
ぶつくさ文句を言っているが、サンジに喧嘩をふっかけてくる気配はない。
そんなゾロを連れて、サンジは倉庫のカギを開ける。
倉庫の中は一層薄暗い。
パチ、と小さな裸電球をつける。
「どれ、酒は…」
ゴソゴソ、と酒を貯蔵していたはずの場所を探すが、酒はどこにもない。
「あれ…?確かここに、何本か…」
そこで、サンジははっと後ろを振り向いた。
「てめぇ…!!酒、こっそり飲み干しやがったな!!」
「あぁ…やっぱ酒が飲みたくてなぁ。あれが最後だったのか…」
ゾロは悪びれもせず、あさっての方向を見ている。
「おめぇ…知ってたな、酒がないってことを…!」
「だとしたら、どうなんだ?」
ニヤリ、とゾロが悪人顔でサンジを見た。
そして、後ろ手で倉庫の鍵をかける。
「酒がないんじゃしょうがねぇ。お前で暖を取らせろ」
…は?
サンジは頭が真っ白になる。
…え?どういうことだ?ゾロは今なんていった??
あっけにとられているサンジを、ゾロはものすごい勢いで押し倒した。
「あ!?へ!?ちょっと何やってんだお前!!」
「いいからじっとしてろ、シャツのボタン取れるぞ」
そういいながら、ゾロは手際よくサンジの服を脱がしていく。
「あったまるには、裸同士がいいって言うだろ?」
ゾロも、するすると自分の服を脱いで行った。
そして、肌をぴたっと合わせる。
「ちょ…?え…?何やってんだお前…?」
「いいからじっとしてろ」
ゾロの吐息が、サンジの耳に触れてむず痒い。
だが、ゾロはがっちりとサンジを抱きしめて、離さない。
「ああ、そうだ。イイモノを手に入れたんだ。」
「イイモノ…?」
「そうだ。これを使えばもっとあったまると思うぜ…」
そうして、ゾロが取り出したものは。
バイブ。
「これをお前のケツにぶっこみゃー、もっと激しく…」
「てめえええええええふざけんなあああああ!!」
サンジの蹴りが炸裂する。
ドゴっと倉庫の扉が、裸のゾロごと飛んで行った。
「っくしゅ!!!あーあ、チクショウ…」
ゾロは大きなクシャミを一つ。
肌寒い挫折を味わったのだった。
2013.08.06