四季、始期、死期
俺は対白蘭でアイツに勝った。
だが、アイツの想いの強さには負けた。
だから俺はアイツを死ぬ気で更生することにした。
ミルフィオーレの白蘭は死んだ。
でも人としての白蘭は生きている。
いや、──…生かしている。
俺は殺せない、アイツを。
何故かは分からない。
だがはっきりと断言すると俺はアイツを、殺せない。
見た目優雅に紅茶を啜る俺の目の前。
全身真っ白ていうか白髪の奴が頬張っていた。
「ちなみに白髪じゃなくて銀髪でーす」
「黙れ、そして消えてくれ」
銀髪でも白髪でも俺にとってはどっちでも良いんだよ。
何のこのこボンゴレ来てんだよ。ていうか、どっから入った。
前戦を未だに忘れていない俺は奴を睨みつけるしかない。
「お前また何かやらかす気か」
「ううん、遊びに来ただけだからそれは無いよ。それよりマシマロ美味しいから綱吉君あーん」
「いらねーよ。つか、それ完璧に俺の菓子だよね?」
「うん、美味しい。それに白って僕にピッタリだ」
共食いかオイ。
止めてくれよ、萎える。
それ食ったら帰ってくれよな。
「やっぱりこの屋敷無駄に広いねぇ」
コイツ、本当に何しに来たんだよ。
俺はまだお前を完全に許してない。
今来てもお前に何もしてやれないよ。
「白蘭」
「んー?」
「皆に見つかる前に帰れよ」
ここで皆に見つかりでもしたら確実。
全面戦争と死亡は免れないだろうから。
そうなる前に逃がしておかなければならない。
そう考えているとマシュマロを摘んでいた白蘭の手が止まって俺を見ていた。
「綱吉君ってさ、優しいよね」
「へ…?」
唐突に言われて俺は思いきり間抜けな声が出てしまった。
そんな俺に構わないというように白蘭は続けて言った。
「そんな優しいから、僕を殺せない。だから色んな人につけ込まれるんだよ?」
いつもとは違う俺をただジッと見つめる白蘭の瞳。
俺はその瞳を以前にも見たことがあった。戦った時。
でもその時はお互いに気持ちが戦り合うしかなかった。
「そんなだから、僕は離れないんだ」
だから今まで気づかなかったのかもしれない。
今の白蘭は誰から見てもただの一般人にしか見えない。
白蘭に向ける一般人というのは『人間』のことを差している。
「もう僕は綱吉君から離れられないんだよ」
逆に惹かれちゃう、と色気めいた視線を送ってきて。
俺がそれで落ちるとでも思っているのだろうか。
それに奴は何か勘違いしているのではないか。
「俺は別にお前が気になっているから殺さないわけじゃない」
「知ってるよ。君は僕が好きなんだよね?」
「だから違うって」
「違わない」
何だこの男は。頭が狂ってるのか。
それとも脳内での妄想が激しいだけなのか。
いい加減にしろ、を口を開こうとして開けなかった。
それは白蘭がいつの間にか俺のすぐ目の前にきていたから。
「綱吉君」
「な、に…っ」
ふに、と唇に何かが当たって。
俺はそれが何なのか分からなくて。
分からないまま白蘭が離れていって。
【四季、始期、死期】
何かが変わって、始まった。
何かが変わって、死んだ。
そんな感触を感じる。
「君はきっと、僕を殺せないから」
何かが、変わったんだ。
fin.