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あえて言うなら友愛?

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何もかもが、煩わしくて。
何もかもが、気に入らない。

こんなにも不愉快で不可解な思いは初めてだ。

「雲雀さん」

それもこれもこの男、沢田の姓を持ち徳川の名を持つ男のせいだ。
目の前でチシャ猫みたいな不気味な笑みを浮かべる、沢田綱吉のせいだ。

*


昨日は晴れ、今日は晴天。
そして明日は快晴に続くだろうという。
何とも気持悪いほど綺麗な笑みを浮かべる。

「どうしたの雲雀さん、そんな吐き気がするようなげっそりした顔して」
「まったくだよ、気持悪い」
「だからそれは、なぜ?」
「なぜ?それを君が聞くのかい?」

今、ソファーに押し倒して人の反応を楽しんでる君が。
そしてどの口がそんなことを口走っているのかな。

そんな思いを込めた視線を送ってみるが、やはり。

「俺もそのまま雲雀さんに返しますよ」

ハァ、溜息が出てしまっても仕方ない。
首筋に埋められた頭と蜂蜜色の髪が顎を突付いてくすぐったい。
だけど僕たちは別にやましいような行為をしているわけではなかった。

「…君って、ほんと変わってる」

そして僕も別に意味は無かったのだけれど手触りが良さそうな髪を撫でていた。
すると少し下から短い息を吐いて僕を褒めるような声が聞こえてきた。

「雲雀さん、それ気持ちいい」

僕はあえてそれには返さずに撫で続けた。
それは褒められて気を良くしたからという理由じゃない。

僕が手触りの良い髪を撫でたかった。
ただ、それだけのことだから。

深い意味はない。

「雲雀さん」

だけど僕の心の奥底の心情を読んだように彼は話しかけてきた。
僕がその真理を考えていたのにその先を言うように尋ねてきたんだ。

「俺を愛してますか?」
「憎い」
「せめて嫌いって言ってくださいよ」

苦笑して少し傷ついたように言う彼。
だったら初めから聞かなければいいのに。

だが、忘れていた。
この男は少しのことでは懲りない。

「…でも、そうじゃなきゃこんな優しい触り方できませんよ」
「深い意味は無いよ」
「だけど雲雀さんは俺を愛してる」

うん、愛してるよ。それは間違いじゃない。
でもそれを恋愛として見るのはどうかと思うよ。

「雲雀さん、そろそろ俺に惚れてください」
「何言ってるの。君にはあと三ヶ月早いよ」
「三ヶ月で良いんですか。ていうかそれって、」

首筋から顔を上げて僕を見て少し歪んだ顔を見せる。
それを見て今度は僕がにやりと笑って言ってあげた。

「思い出した、これってアレだよね」

好きじゃなくて嫌いじゃない。
恋人でもなければ友達でもない。
友情じゃなくて、愛情じゃなくて。

そう、

【あえて言うなら友愛?】
(違います、人はそれを恋愛と言うんですよ)

僕は君とは違って自分で答えを導きださなければ理解しない。
今時で言えば合理性なくてはいけない科学者と同じなんだ。

だから、この身を持って体感しないと。
君のことをもっと知らないと。

これは恋とは認めたくないんだよ。

fin.