この腐りきった世界に花束を
淀み紫色に染まった空と黒い雲、風が運んでくる血と腐敗した肉のにおい。
あっちの世界―地球―よりも居心地がいい。ルイスは息を吸い込み、吐き出す。
「あら、あんたも負けちゃったの?リーダー」
マリスカが笑いながら近づいてくる。
彼女特有の女の香りと好んで作っている毒草の香の香りが漂う。
あぁと答えれば意外そうな顔でルイスをマリスカが見た。
闇の呼び声の中では随一の実力者であるから、意外だったのだろうか。
マリスカは言葉を探すように目を漂わせる。相変わらず要らない気を使うなとため息が出た。
そういうのは、好きではない。どちらかといえば真っ向から来てほしい。
ルイスの手がマリスカをとらえ、腕の中に閉じ込める。
驚くマリスカの首元に顔をうずめ、甘えた。
心地よさそうにマリスカは、目を細める。そして、ルイスの頭をなでた。
「どうしたの、甘えん坊ねぇ」
「甘えろって言ったろ?だから、甘えてるんだよ」
そうなのとマリスカは、満足そうに笑う。
こいつのこのすべてを支配しきったと思った時の顔ほどそそるものはない。
この笑みが崩れる瞬間の衝動は、最高にクル。
「ゼッドたちにも会う?」
その一言で冷めた。
マリスカはそれに気づくと苦笑する。機嫌を損ねたか。
謝罪代わりにキスをした。
普段ルイスとするキスは、ほとんどディープ。今回のようなキスは、マリスカ自らしかしない。
お願い、許して?とおどける。
やれやれとルイスがため息をつくとマリスカを開放し、バイクに座る。
許してもらえたのかうかがうようにマリスカが見ると、眉間にしわを寄せ睨むようにルイスがマリスカを見た。
かわいいとマリスカが笑う。
どうやらルイスは、拗ねたようだ。
「拗ねないでよ、ルイス。愛してるんだから」
「どうだか」
「もう…この腐界じゃあ、私たちみたいな恋愛感情を持つ個体って希少じゃない?素晴らしいことだと思うわ。
こういう甘い感情を抱くことなんてそうそうない。この腐りきった世界に私は、感謝してるわよ」
それを聞いてかルイスが笑う。
その行動にマリスカは、不服そうに眉をしかめる。
「んなに睨むなよ。なに、お前がそういうなら俺もこの腐界に感謝するぜ」
「どのくらい?」
ルイスが不敵に笑い、近くまで来たマリスカに不意を突いてキスをする。
「まぁ、花束くらいくれてやるよ」
それを聞くとマリスカは、驚きそして笑う。
ルイスに近づくと彼のバイクの隣に座り、頭を彼の肩に預けた。
<おまけ>
マ「そういえばニック、体戻ったかしら」
ル「ニック?んなのいたか?」
マ「えぇ、シスター・ジュリエットの腰に」
ル「…?いたか?」
マ「いたわよ、たまに男の声聞こえなかった?」
ル「……??」
マ「無理して思い出さなくていいわ」
基本高笑いしながらバイクで爆走、あとはゾウさんメカで戦ってたからニックは視界に入ってなさそう…
マリスカは名前でちゃんと言ってたからニックのこと憶えてそう…
闇の呼び声でニックに気づいてたの唯一マリスカさんだけな気がする
作品名:この腐りきった世界に花束を 作家名:兎餅