嘘の色は純白
そんな壊れそうな心なら、
手離さなければ良いのに。
「ユニ、聞いて?」
時折、彼は心を無くした『私』に話掛けて来る。
私はもうここには存在しないのに切なく響いた。
「今日はね、ユニの為に花を摘んできたんだよ」
言いながら手に持っていたバスケットをテーブルに置く。
動けずに彼を見ることしか出来ない私の腕を引き閉じ込める。
「……ユニ」
白蘭の腕の中は思いのほか、落ち着けた。
それほど優しい心音が響いて安心してしまう。
──…愚かな私。
これが嘘だと知っていても、離れることが出来なくて。
たとえ肉体を取り戻せたとしても彼を裏切ることも出来ない。
花束にリボンが付けられて、その束が彼によってばらされた。
そして目の前にふわっと白いその花が踊るように静かに舞う。
「これは『アカシア』って呼ばれる花なんだよ。でもね、この花には別名『偽アカシア』や『ミモザ』の花って呼ばれることもあるんだ。いっぱいあって不思議でしょ?何でだと思う?」
呼び掛けて散る白い花を指で摘んでクスリと笑う白蘭。
全てを白に包んだ彼とその花は恐ろしく似合過ぎた。
何も答えられない私の頭を撫でながら彼は言った。
「その『花』それぞれに『言葉の意味』を持たせるためなんだよ」
頭に昔懐かしい王冠を作ってみせて花と戯れて。
私の指と彼の指が絡められて強く、深く繋がれた。
薬指にキスを落としたかと思えば、射るような瞳で私を見つめる。
「そしてアカシアは『プラトニックな愛』、まるで僕等そのものだ」
白い人は私に秘密の愛を教えてくれました。
純粋に精神的に肉欲を伴わない純心な想い。
私はそれを無碍には出来なかった。
「僕はユニを愛してるよ」
【嘘の色は純白】
(この花は全て、貴方そのものです)
fin.