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【真・女神転生Ⅳ】短編詰め

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 平穏な日常は、音もたてず崩れるという表現を耳にすることがあるが。果たして本当だろうか?
 みんな、聞こえてるのに知らないふりをしているだけではないか。ピキピキと細かな音を立てひび割れていく日常を聞こえないふりをして。それは確かに表面上ではいきなり崩れたように見えるであろう。しかし実際は小さなひびが積み重なって、瓦解していっているだけであるのだ。

 自分たちは崩れていった。どこが境目だったのか。ずっと4人、同じ道を歩んでいるものだと。そう思っていた。何度もループする世界。善を抱くあまり過度な保守に走ったこともあろう。すべてを自分の意思次第で決め、世界を作るため、過度な破壊に走ったこともあったろう。自暴自棄になり見知らぬホワイトメンなる者たちのいうままにすべてをないことにしたこともあった。

 きっと。どこかにあるはずなのだ。あの運命の日。見た夢の続き。善なる友と悪なる友の後に映る灰色の情景。
 少女は言う。「私を思い出して」「…名を」
 あの海辺。あそここそが、自分が追い求めた理想なのだろう。幾度やっても届くことのない、悲願を今。


 フリン/中庸


 この手では。この手では、君に触れることすらかなわぬのだろうな。
 いつもと変わらぬ「口調」でヨナタンはそういった。ピタッと、後ろからついてくる。以前、「あの姿」のまま寄宿舎に入って見せたときは少々天然であった彼らしいと。天使どもと合体してもなお、彼は彼だと。安堵したのを憶えている。

 白く輝く、「神の戦車」。前進することしか許されていない君。

 愛している…と君は言う。だがそれは神が楽園を追われ地を這う我らを憐れむのと同じく。本当に愛しているわけではない。

 
 フリヨナ/君じゃない君を僕は愛そう


 「飯」
 Kの酒場に、珍しい客が来た。カウンター周りのサムライたちは、気にしていないふりをしながらも、横目でカウンターごしに会話する二人を盗み見ていた。
「以上が修道院よりの…」
「飯だ」
 美しい、それでいて陶器のような肌は感情を感じさせはしなかった。碧玉に輝く瞳を、何の感情もなく眼帯の男にむけた。
「なんでしょう」
「交換条件だ。ここの黒板は俺らサムライの娯楽でもある。そこに公務を放り込むんだ。少しくらいこっちから注文のふたつやみっつつけてもいいだろう」
 修道服に身を包んだ女が眉根をひそめたのを見て、眼帯の男ーKはシニカルな笑いを浮かべた。
「何。今回の黒きサムライの件についてはなんにも干渉はしないさ。俺の交換条件はお前さんにあるのさ」
「ギャビー」
 一息いれてKは女の名を呼んだ。
「私、個人にでしょうか」
「おうよ。ここで飯食ってけ」

「お断りします」

何年続く初恋か/K→ギャビー

 何度目になるのか。彼は、サムライとして初々しかったあの頃よりも大分歳をとってしまったけれど。
この酒場を公務で訪れるたびに、彼に会うたびに食事に誘われる。天使である自分に、人の子の食事など。
 幾度となく繰り返される問いかけに。
 ほんの少しの安らぎを憶えてしまうのは、わたくしは堕落してしまったのでしょうか、主よ。

何年か続く初恋:アナザー/ギャビー