「ただひとつの願い」
ずっとずっと前から
あなただけを見ていた
あなたも気づいていたのでしょう?
でも気づかないふりをして
私ももちろん気づかないふりをした
重荷にはなりたくない
だから見ているだけでよかった
あなたが私を見なくても
ただ、いっしょにいられれば
元気でいてくれれば
明日に向かってまっすぐに歩いて行く
その姿が見られればよかった
傷つくのは見たくなかった
あなたのつらい姿は見ていられない
あなたは強い人だから
誰にも甘えない人だから
傷ついても、倒れても、
ひとりで立ち上がる
だけど、もう、いいでしょう?
あなたは充分に戦った
充分に傷ついた
たくさんの人を助けて
誰よりも人一倍
なのに、つらい顔ひとつ見せずに
もういいでしょう
あなただって人間なのだから
誰かに甘えたっていい
辛いっていってもいい
今までずっとあなたに支えられてきた
だから今度は私にあなたを支えさせて欲しい
甘えて欲しい
頼って欲しい
辛いっていって欲しい
もういいでしょう
あなたはずっとひとりで戦ってきたのだから
私がすべてを受け止める
私は強くなろう
あなたのためなら
私は戦うことができる
たとえ世界のすべてを敵に回しても
あなたのためなら迷わない
あなたのためなら何も惜しくない
だから私を頼って
私に甘えて
私にすべてを許して
私を……許して
作品名:「ただひとつの願い」 作家名:maki