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水泳バカップル

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これで付き合っているのがバレました



時は凛と遙が付き合い始め、それをまだ周囲が知らなかったころにさかのぼる。

遙の家に岩鳶高校水泳部男子部員たちと凛が来ていた。
みんな制服姿で居間にいて、水泳の話などをして時をすごしていた。
「ねぇ、ねぇ」
ふいに渚が言った。
「恋バナしようよ!」
明るく提案した。
その隣で怜がメガネのフレームをおさえ、ハァとため息をついた。
「また突然そんなことを言って……」
「別にいいじゃない」
渚はぜんぜん気にしていない様子で怜の言葉をバッサリ断ち切り、その視線を白い学生服を着た凛に向けた。
「じゃあ、オーストラリアに留学していた凛ちゃん!」
「なんだよ?」
「ファーストキスの感想は?」
渚はテーブルの向こうにいる凛のほうに身を乗りだして、わくわくした空気を身体から発しながら答えを待っていた。
相手が答えづらいような質問は止める傾向にある真琴も怜も、止めずにいた。
やっぱり、気になった。
だが、もし凛がすごく困るようなら助け船を出すことにした。
凛は一瞬戸惑っているような表情になったが、少しして、なにか思い出しているような表情に変わった。
それから、渚に向かって言った。
「サバの味がした」
直後。
「「「え」」」
渚・真琴・怜の三人のあげた声が重なった。
「そ、それって……」
そう言いつつ、渚がめずらしく緊張した様子で遙のほうを見た。
真琴も怜も表情を引きつらせて遙のほうに眼を向けた。
三人の視線が自分に集まっているのに、遙が気づいた。
「俺か?」
しかし、遙は今度は自分が凛と同じ質問をされているのだと勘違いした。
遙は首をかしげた。
自分のファーストキスを思い出しているようだった。
やがて、遙は無表情で答えた。
「相手がしつこかった」
「ハルっ、てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
吼えながら凛が手のひらを机にバンッと叩きつけ、畳から立ちあがった。
その顔は真っ赤だった。
怒っているようにも、恥ずかしがっているようにも、見えた。
凛は遙の近くまで行って足を止めた。
遙はそんな凛を無表情のまま見あげた。
凛は遙に言った。
「外に出ろ!」
すると、遙はあっさりと立ちあがった。
その遙の腕を凛はガッチリつかみ、歩きだした。
ふたりは居間から出ていった。
けれども。
しばらくして、廊下から声が聞こえてきた。
「なんで、あんなこと言うんだ!」
「正直な感想だ」
「正直な、って……」
「しつこかっただろ、おまえ」
「たとえそれが本当でも、言うな!」
「どうしてだ?」
「傷つくだろ! オレが!」
「……これだから、おまえは面倒くさい」
「面倒くさいとか言うなーーーー!!!!」
そんなふたりのやりとりを聞きながら、居間に残された三人は無言のまま微妙な表情をしていた。








作品名:水泳バカップル 作家名:hujio