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りんはるちゃんアラビアンパロ

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出会う



灼熱の太陽の下、砂漠を馬が進んでいる。
このあたり一帯で日常的に用いられるのはラクダであり、馬は非日常で用いられるような動物である。
だから持ち主は馬を所有できるだけの富があることがわかる。
しかも、艶のある栗毛の良い馬だ。
もともとこの地に馬はいなかったのだが、他の地から運ばれてきて、高温の地に合わせて痩せて足の長いタイプの馬が生まれるようになり、今では名馬の産地として知られるようになっている。
身体が軽く、足が速い。
そんな特色のあるこの地の馬の中でも足幅が広くて駿馬に見える。
馬上のひとは、このあたり一帯を治める王だ。
手綱を巧みに操る腕は太く、だが力強く引き締まっている。
まだ、若い。
二年前に前王である父が海難事故で亡くなり、当時は別の国に政を学びに出ていた王子が急遽帰国して王となったのである。
後継者不在時に王が逝去するという事態に国が大きく乱れなかったのは不幸中の幸いだった。
それでも多少の混乱はあり、父が亡くなったという精神的打撃をこらえつつ、それらを乗り越えてきた。
今はようやく国が落ち着いてきたところである。
王が供の者もつれずにたったひとりで砂漠を進むなど、危険なことである。
だが、ふと気が向いた。
心が焦がれた。
自由に。
リンの眼前に、これまでと違う光景が広がった。
えんえんと続いていた砂色の中に、鮮やかな緑色。
ナツメヤシの葉の色だ。
したたるような緑。
それがあるということは。
あった。
泉、だ。
それも大きい。
自然にリンの顔が輝いた。
しかし、その表情が変わる。
眼が泉の中にいる先客をとらえていた。
視線を少しよそにやってみると、生い茂るナツメヤシの中の一本にラクダがつながれているのを見つけた。
先客はそのラクダでこのオアシスまでやってきたらしい。
リンは眼をふたたび先客のほうに向けた。
先客は上はブラウスのような下着、下は裾をしぼったズボンのような下着という格好で泳いでいる。
気持ちよさそうだ。
水のことしか頭にないようで、リンの存在に気づいていない。眼に入っていないらしい。
リンはオアシスのほうへとさらに馬を進める。
やがて、馬をおり、泉へと駆けつつ服を脱ぎ捨て、下着姿になった。ただし、先客とは違い、上半身裸である。均整の取れた身体だ。
泉へ、足を踏み入れる。
水の感触。
喜びが身体中を満たし、リンの顔がさっきよりも強く輝いた。
全身を水に沈めていく。
心が望むままに、泳ぐ。
泳ぎ、先客のほうに近づいていく。
ようやく先客の眼がリンへと向けられた。
静かな瞳。
なにを考えているのかわからない表情。
先客はリンから眼をそらした。近づいて来るな、と告げているかのようにリンから離れていく。
リンはむっとして泳ぐ速度をあげた。
それに気づいたらしい先客も泳ぐ速度をあげる。
速い。
ムダのない動き。
綺麗な泳ぎだ。
水の精霊なのだろうか。
そう思ってしまったぐらいだ。
泉は広い。とはいえ、もちろん海ほどではない。
やがて泳げない深さの地点まで来た。
リンは泉の中に立つ。
先客も泉の中に立っている。
静かな眼差しをリンに向けている。
リンはさっきまでの先客の泳ぎを思い出した。
そして、笑う。
話しかける。
「速いな。おまえ、本当に女か?」
そう問いかけられた相手はしばらく無表情のまま黙っていた。
だが、動き、リンとの距離を詰めてきた。
リンの手をつかんだ。
あいかわらずの無表情で、リンの手を自分のほうに引き寄せる。
それから。
「……ほら、胸がちゃんとあるだろ」
素っ気ない声でリンに告げた。
リンの手のひらは、ブラウスのような下着越しに先客の胸に触れていた。
ささやかではあるが、やわらかなふくらみ。
「!?」
リンは驚愕する。
こ、これは……。
今、自分の触れているこれは……。
このやわらかいものは……!
リンは叫ぶ。
「お、お、お、おおおおお、おまえ、ホントに女かっ!?」
「だから、胸がちゃんとあるだろう?」
「そういう意味じゃねーよッ!!!」
顔を真っ赤にしてリンは怒鳴り返した。