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りんはるちゃんアラビアンパロ

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ハルカの口説き方



ハルカはマコトの家が経営する店の手伝いをしていた。
店は街の中心を走る大通りに面している。
出入り口のあたりには強い日射しや雨を防ぐための屋根が設けられている。
そして、そこから何人かが店の中を見ている。
店に用があるのではない。
ハルカを見ているのだ。
ウワサのせいだろう。
それを察して、ハルカは悔やんだ。
マコトたちに会ったときに、オアシスの泉で国王と会ったことを言わなければ良かった。
会ったのが国王だと、ちょうどあのとき、思い出さなければ良かった。
泉で国王に会い、国王がハルカの胸をさわった。
事実はそれだけなのに、ウワサはとんでもないことになっているようだ。
『襲われたんだってねぇ』と大慌ててでやってきた年上女性がハルカをなぐさめようとしたこともある。
それは事実ではないとハルカは否定したのだが、その女性は『うんうん、わかってる、わかってる』と言って、ハルカの肩を優しくなでて去っていった。
自分に向けられる視線が、なんだか妙に生温かい。
どうやら自分は同情されているらしい。
同情されるようなことなんかされていないのに。
国王は性別を確認するためにハルカの胸をさわっただけ。
そう正しく認識しているのはマコトぐらいだ。
そのマコトからはウワサなんてそのうち消えるからとなぐさめられた。
だが、ウワサが消えるまでこのうっとうしい状態が続くのだろうか。
ハルカはため息をつきたくなった。
そういえば、マコトになぐさめられたあと、めずらしく説教もされたのだ。
『ハルは無防備すぎる』と。
しかし、ハルカは商人の娘で、しかも遠方の土地までキャラバンを作って出かける商人の娘で、いずれ自分も両親のように商いのために長い旅をするつもりでいるため、道中での賊の襲撃を想定し、身体をきたえている。
あのオアシスに行ったときも武器を持っていった。
さすがに泳いでいるあいだは身につけていなかったが、敵襲を察したら、敵が泉までやってくるあいだに武装するか、ラクダで逃げるつもりだった。
そう説教されているときに思っていたら、さすが長年のつきあいのせいか考えていることを読まれたらしい。
マコトから『武器は持って行っていたようだけど、それで絶対大丈夫じゃないことぐらい、ハルにもわかってるよね』とやんわりと言われた。
ハルカはむうっとなったが、あとで考えてみれば、マコトの言うとおりだと感じた。
さすがに無防備すぎたか。
反省する。
だが、同時にあのオアシスのことを思い出したせいで、泉で泳いだときのことも思い出した。
気持ち良かった。
心が、求める。
水、を。
意識が水の記憶に吸いこまれる。
しかし、急に外がさわがしくなって、ハルカは現実に引きもどされた。
なんだろうと思い、ハルカは店の出入り口のほうへ行き、道を見渡した。
そんなハルカの眼のまえに、馬が駆けてきた。
馬が足を止める。
さらに馬上のひとが馬をおりた。
その顔をハルカは見る。
今度はさすがに気づいた。
国王、だ。
「話をしに来た」
リンはハルカの顔を見てそう告げると、店の中に入っていく。
そのあとをハルカも追う。
道にいるひとびとの視線を集めていたのが、店の中に入ることで彼らの視線から遠のいた。
リンは店の中をある程度まで進むと立ち止まり、身体ごとハルカのほうを向いた。
ハルカも立ち止まり、黙ったままリンが話すのを待つ。
リンが口を開く。
「妙なウワサが広まってると聞いた」
ハルカは無表情でうなずいた。
国王の意図がわからない。
妙なウワサが広まっていることに対する苦情を言いにきたのだろうか?
「それで、だ」
リンは、ふと、ハルカから眼をそらした。
なんだか言いづらそうな雰囲気である。
しかし、少しして、リンは自分のまわりにあるその微妙な空気を振りきるように頭を左右に短く振り、なにかを決意した顔つきになって、ふたたびハルカのほうを見た。
「責任を取ろうと思う」
「……責任?」
ハルカは少し眉をひそめた。
責任、とはなんだ。どういうことだ。
リンはまたなにか言おうとして詰まったような顔になり、けれども、また決意した顔つきになって、ハルカに告げる。
「王宮に来い」
王宮に来い?
どういう意味だとハルカが思った直後、リンはぶっきらぼうに続ける。
「俺の妻になれって言ってんだよ」
「断る」
ハルカは即答した。
だが、言ってすぐに国王に対する礼儀がまるでなかったことに気づき、さすがにハルカは内心あせった。
けれどもリンはハルカの無礼をとがめようとはしない。
リンはじっと遙を観察するように眺めつつ、なにかを考えている様子だ。
しばらくして、リンは口を開いた。
「王宮には広いプールがある」
ハルカは眼を見張った。
頭には王宮にあるらしい広いプールの想像が浮かんでいた。
国王が広いというのだから、きっと、かなり広いのだろう。
その広いところに水が張られている。
素晴らしい光景だ。
そんな想像をハルカがしているあいだに、リンは距離を少し詰めていた。
リンがさっきよりも近くから、少し声を落として言う。
「王宮に来ねぇか?」
「行く」
ハルカは即答した。
あいかわらず無表情だが、その瞳はきらめいていた。

その場にナギサがいたら、ハルちゃんチョロすぎーと言っただろう。