二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

りんはるちゃんアラビアンパロ

INDEX|8ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

ひとりごとのように、ふだんは隠している本音が口からこぼれ落ちたように、言う。
「だれにとっても良い政治なんて無いんだろうな」
王子として学んだこと、さらに王を二年つとめたことの重みが、淡々とした口調の中にもあらわれていた。
ハルカの胸がざわめく。
苦しいと感じる。
なぜ胸が苦しくなったのかは、わからない。
ハルカは口を開いた。
「だから、おまえは泳ぐのか」
思ったことをどんどん口にしなければ落ち着かない。
妙な気分だ。
「水の中にいれば、すべてを忘れられるから」
「ああ」
リンはハルカの意見に同意した。
けれども。
「いや、違うな」
すぐに否定した。
「俺は単に泳ぐのが好きなだけだ。少しでも速く泳ぎたいだけだ」
リンは軽く笑った。
そして、ハルカを見た。
眼が合う。
リンの顔から笑みが消え去った。
整った顔にあるのは、真剣な表情。
そのバルコニーに置かれている手が動いた。
リンの手が近づいてくる。
それがわかっていて、ハルカは身体をひかない。動かずにいる。
頬に、リンの指が触れた。
他人の肌の感触。
他人の体温が伝わってくる。
しかし、不快だとは感じない。
最初は指だけで触れていたのが、大きな手のひらが頬をなでた。
それでもハルカは動かずにいる。なぜか、動く気にならない。
リンが身を近づけてきた。
低い声が告げる。
「俺はおまえが欲しい」
さらに身を寄せてきて、続ける。
「王妃になれ」
その瞬間、ハルカは動いた。
リンを押しのけた。
ハルカは二、三歩さがり、その位置からリンを真っ直ぐに見る。
「王妃にはならない」
きっぱりと言う。
「俺は、ただのひとがいい」
リンは眼を細めた。
その口がわずかに開き、だが、結局なにも言葉を発しないまま閉じられた。
ハルカは唇を強く引き結んだ。
直後、リンに背を向けた。
リンがいるのとは反対方向に歩きだす。
螺旋階段にもどった。
階段をおりていく。
いつのまにか速度があがり、螺旋階段を駆けおりる。
やがて、ハルカは塔の外へ出た。
さっきリンが守りたいと言った星の中にもどった。