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夢にまで

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『赤澤…僕を貰ってくれませんか?』

そういって目をつむり

観月は顔をこちらに向けてくる

雪のように透き通ったキメの細かい頬は緊張で少し強張っている

赤澤はそっと手を添える

そして少し屈み込み

さくらんぼのように美しい唇に自分の触れようとした

その瞬間

「ジリリリリリ…」

朝を告げる目覚まし時計が鳴り響く

あまりにも残酷な夢の終わり方や自己嫌悪やらで最悪の目覚めだ

やり場の無い怒りをとりあえず目覚まし時計にぶつけておいた


一目惚れをして長いこと想いを寄せてきてきた赤澤の想いが

観月に通じたのは一ヶ月と少し前

確かにあの時両想いになったはずだ

なのに

「まだキスすら許してもらえてないなんて…」

テニス部部長という肩書や
褐色の逞しい身体ゆえ

好意を寄せてくる女子は少なくなく
経験もそれなりにしてきた

今回は明らかに何時ものペースより遅い

拒絶されたわけではない

ただ…どうしても最後の一歩が踏み出せないのだ

今までにこんな想いを体験したことはなかった

嫌われたらどうしようなどという女々しい妄想が駆け巡る

好きで好きで

大切でしょうがない

欲求は積み重なり

ついに夢にまで見るようになってしまった

そんなことを一日中考えていた

部活が終わり
部員達が出払った

「何を一日中考えているんですか
普段考えるなんてこと10秒ももたないあなたが」

さすがマネージャーというべきか
観月は赤澤の異変に気がついていた

いつの間にか部室には二人きり

「何時も何も考えていないアナタが考え込んでいたらこっちまで変になってしま
います
何をそんなに悩んでいるのですか?」




「観月」

「はい」


「キスしてもいい?」




「………は?」


あまりの突然のことに思考回路が追いつかない

今、赤澤はなんて―

「俺、観月にキスがしたい」
顔が赤くなっているのがわかる

顔を背けたいが
真っ直ぐに見つめ返してくる目から逸らせない

驚きと恥ずかしさから何も言えない

「嫌なら嫌って言ってくれ
観月の側に居させてくれるなら俺はそれで…」

嫌なわけがない

ずっと好きだった相手からの告白

出来過ぎている

実は赤澤は自分をからかっているのではないか

その証拠に
手がはやいと評判なのに一ヶ月も何も無しではないか

そうなんども考えネガティブになっていた矢先だった

しかも自分のことを大切だからとぬかしてくる


なんだか情けないことを口走ってしまった気がする

黙っているし呆然としている


つまり…否定か


「変なコト言って悪かった
忘れてくれ」




「……ません」


「え?今なんて…」


「忘れたくないと言ってるんです」



それは―

頭で考える前に抱きしめた

視界を瞼で遮り

あとはあなたの熱を感じるだけ

作品名:夢にまで 作家名:魚と猫