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お悩み解決戦線

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 フリオニールの息を飲む気配がする。空気越しに伝わってくるそれが少し可笑しくて、ティーダは笑い出しそうになるのを堪えた。
 ティーダの科白が、さも不可解とでも言うように、彼女は怪訝な顔を浮かべる。
 泉の底を探りながらも、ティーダは相手が聞き漏らさないように、殊更はっきりと告げた。
「もう、止めろよ。そうやって、大切なやつ傷つけて。それ以上に、自分が傷ついてさ」
「な、にを……言ってるの……」
「傷つかないわけがないんだ。なのに、どうしても自分を気にかけて欲しいから、そいつ傷つけて。……怒りも、悲しみも、全部フリオニールのせいにして。全部他人のせいにして、自分が傷ついてることに、気付かないフリをしてる」
「知った風な口を利かないでよっ! あなたなんかに、私の気持ちが分かるはずないわっ」
 身勝手な感情の発露に、ティーダは悲しい心情に駆られる。
 彼女も、同じ映画を観たはずなのに。
 どうして気付かないのだろう。大切な人に対する、想いの在り方に。
「自分のことを気にかけて欲しいって、そういう気持ち……別に、アンタだけのものじゃないって。――と、あった!!」
 こつり、と手に当たった、どこか暖かみのある硬質の感触。
 立ち上がって実物を確かめると、自然と笑みが溢れた。
 バシャバシャと水を掻き分けて泉を出たところで、フリオニールとクラウドが心配げに駆け寄ってくる。
「ティーダ……」
「そんな顔するなって」
 満面の笑みで差し出されたネイビーブルーの小さな箱を、フリオニールは複雑な表情で受け取った。
「なあ、本当に好きなやつが大切ならさ」
 そう切り出した途端、彼女は僅かにたじろぐ様子を見せた。
 ティーダは一呼吸置いて、安心させるように微笑む。
「そいつの本気ごと、愛してやるべきなんだ。どんなにこっちが好きで、一緒にいられて幸せでもさ。おんなじくらい相手も幸せに感じてくれなきゃ、こっちだって、本当に幸せになんかなれないんだから」
「だから……男のあなたに、何が分かるっていうの……」
「大切だって想う気持ちは変わらないだろ。その相手が、自分を好きになってくれない恋人でも、親友でもさ」
 剣呑な表情で唇を噛みしめる彼女が、小さく呻いて瞼を伏せる。彼女の心を顕すように、ナイフが力なく地に落ちた。
 崩れ落ちていく身体。地面に座り込み、両手で顔を覆う彼女。
 もしかしたら彼女も、あの映画を観て思うところがあったのかもしれない。
「本当は、こんなことしたくないんじゃないかって思ったんだ。だって、運動部のマネージャーを自分から進んでやるようなやつが、人を思い遣れないはずないもんな」
「ごめん……なさい……」
 嗚咽とともに呟かれた言葉に、ティーダの緊張で強張った身体は、徐々に力が抜けていった。
 ほっと一息ついた瞬間、強い力で肩を叩かれる。
 フリオニールが少し困ったような笑みを浮かべながらも、安堵した様子で見つめていた。
 やっぱおれ、こいつがすげー大切なんだな。
 友だちとして大切に想う気持ちとは、少し違う気がした。でもこの感情に、それ以外の適した名前が思いつかない。
「あーあ、結局分からないままだったなー」
「……? なんの話だ?」
「なんでもないっ」
 フリオニールの質問をはぐらかしたくて、ティーダは力一杯、フリオニールの肩を叩き返した。