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Wizard//Magica Infinity −7−

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あれは、いつの時間軸だっただろうか。

私は、公園のベンチに座っていた。
時刻は確か夜、それも雨が降っていた夜。
雨が地面に落ちる音がよく聞こえていた。私はそんな雨に打たれ続けている。

体に力が入らない。
思考が働かない。
濡れていようが関係ない。

「………。」

昔、私は一度だけ絶望しかけた時がある。

まだ、私がそこまで時間移動をしていなかった頃だ。
魔法少女に待って間もない私はもう誰にも頼らないと決めた後、ずっと一人で孤独な戦いをしてきた。
おかげでこの有様だ。
全てが信じきれなくなり、いよいよ彼女が生存するという希望の光が消えかかった頃、私の中の何かがぷっつりと切れてしまった。

希望なんて無い。

この世界には絶望だけ。

このままこの雨に打たれ続けて溶けてしまいそうだ…。

「まど…か…」

私のたった一つの道しるべ。鹿目まどか。

だけど…いくら繰り返しても…いくらこの身体を削っても…。



彼女を救う事ができない。



私に、その力が無い。



「まど…かぁ……う……あぁ……」


手を伸ばしても、届かない。
彼女の手が掴めない。
彼女を抱くこともできない。

私は…弱い。



「まど………か……ぁ……」



次第に身体が冷たくなる。
そうだ…もう良いんだ。


このまま…目を閉じてしまおう。
このまま、全てを終わらせてしまおう。


あぁ…なんて簡単なんだ。


今までの苦労なんて、こうやって全てを諦めてしまえば、

すぐ楽になれるんだ。



いっそ…このまま……














「こんなところで何をしてるの?」


雨音と共にどこからか男の声が聞こえてきた。
身体はそのまま、視線だけ上へとそらす。
大体自分とほぼ同い年ぐらいの男、背は若干私より大きいだろうか。
薄い茶髪で黒いジャケットを身にまとい、何より私と同じで傘も刺さず両手をポケットに突っ込みながら立っている。
だけど私にとってはどうでもよかった。
第一、こんな夜中に、しかも傘もささずに雨に打たれている不気味な女にわざわざ自分から話しかけてくるなんて、この男は変わり者であることには間違いないだろう。


「ねぇ、俺は君に質問をしているんだよ?こういうのってちゃんと答えるのが筋ってもんじゃない?」


やはり、私に話かけていることには間違いないだろう。
正直、ありがた迷惑だった。
私は今、一人になりたい。
ならいっそ、さっさと何処かへ行ってもらうのが手っ取り早いかもしれない。
私は衰弱しきった身体にほんの少しだけ力を出し、掠れた声で男に返答をした。

「…ほっといて…」

「え、なんて?」

「…ほっといてちょうだい……」

「…はぁ、そう言われると余計心配なんだよね。ちょっと待ってて」


そう言い残し男は何処かへと去っていった。
それからどれだけの時間が過ぎただろうか。
雨の勢いは一向に弱まることはなく、身にまとっていた見滝原中学の制服は完全に水が浸透し、身体に張り付いている。そこから染み出した雨水が私の体温を奪っていく。

すると、何処からかこちらに向かって走ってくる足音が聞こえてきた。
再び視線を上げると…先程の男だ。
片手には傘、そしてもう片手には……あれは一体なんだろうか?
袋?…中になにか入っているように見える…。

「はぁっはぁっ…隣、良い?」
「………。」
「座るよ」

「………。」

わざわざ戻ってきたのだろうか?
無駄な事を。

男は私に雨が当たらないように傘を頭の上へと持ってくる。

「はい、これ」
「………。」

男は先程、大事そうに抱えていた袋の中から何かを取り出す。

「………。」
「ねぇ、ほら」



お願い……お願いだから一人にして…。



「ほら!ねぇ聞いてる?」



私は…私はもう誰にもかかわらない…決めたんだ、もう…



もう…誰にも…頼ら−−−
「あぁもうじれったいな!」
「えっきゃあ!」


いきなりことで変な声が出た。
急に男が私の片手を引っ張り袋から取り出した「なにか」を手渡された。
暖かい…そしてふわふわ…これは。


「…っ…ドーナッツ?」
「うん、俺の好きなプレーンシュガー。食べなよ」


その時私の目の前の光景が鮮明になった。
モノクロの世界が、カラフルになった。


「ほら、別に遠慮しなくても良いよ」
「あ…」



それと同時に降り続けていた雨がピタリと収まり、雲の隙間から月明かりが照らされた。
月明かりは私達に降り更に私の世界が鮮明になる。
目に映ったのは、彼の笑顔だった。



「ようやく目を合わせてくれた。ふぃ~、雨も止んだみたいだね」



それが、私と彼、…いや、操真ハルトとの出逢いだった。


作品名:Wizard//Magica Infinity −7− 作家名:a-o-w