秀徳一年生!
またボールがリングをくぐる音がする。
「まだやんの、真ちゃん」
オレはボールを指で回しながら尋ねた。
オレの相方、真ちゃんこと緑間真太郎は横目でオレをちらりと見てまたシュートを放つ。
「100本打ったら帰るのだよ」
あんな長距離シュートを、100本…。
つくづく尊敬する。
しかもまだ一発も外していない。
「だいたい高尾、先に帰っていいと行っただろう」
「オレ真ちゃんと帰りたいんだもん」
少し頬を膨らませる。
「あと何本?」
「21本なのだよ」
オレは体育館の壁に寄りかかった。
まだまだ時間がかかりそうだ。
でも真ちゃんが打ってるのは見てて飽きない。
異常な程高い弧を描いてボールはリングに吸い込まれていく。
ほら、また入った。
「高尾、お前も打てばいいだろう」
やだよ。
そんなすげぇシュートしてる奴の横で…。
「オレは見とくだけでいいよ」
「つまらなくないのか?」
「真ちゃんといてつまらないわけないだろ?」
「…」
あ、ちょっと赤くなった。
バンッ。
シュート、外した。
「お?」
「…帰るのだよ」
「なんだよーシュート一本外したくらいで」
「だいたいはお前が…っ!」
「は?」
「とにかく帰るのだよ。今日はもう入る気がしない」
と言ってボールをすばやく片付けると出口に向かった。
はー?
もうわけわかんねぇ。
「待てよ真ちゃんっ」
慌ててあとを追いかけた。
「寒い」
真ちゃんがぼそりと言った。
「あっためてあげよーか!」
なーんてオレは両手を広げてみる。
「…………」
何その冷たい目!
ひっでぇ!
「な、なーんてな…」
そろりと手を引っ込めた。
恥っず…!
うつむいた瞬間、顔を長い指でクイッと上を向かされた。
そして、唇に柔らかい感触。
「……っ!?」
一気に体の熱が上がる。
「しししし真ちゃん!?」
「あたためると言ったのはお前だろう」
「そうだけどさっ…」
真ちゃんの手がオレの手を包む。
顔、上げらんねぇ…。
唇の感触はまだ残っていて。
顔のほてりは冷めそうにない。
「暑いな、真ちゃん」
「そう、だな…」