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一点の光 【思考の外】

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「赤司」
部室の扉を開け、既に制服に着替え終わっている赤司の名を、藤は呼ぶ。
「なに」
「監督が、呼んでる」
「そう」
短いやりとりの後、赤司は鞄を持つと藤の横をすり抜けた。
「ありがとう」
手をひらひらと後ろ手でふり、赤司は去っていく。
「……前々から思ってたんだけど」
ふと、ロッカーを閉め、ネクタイを結び直しつつ玲央は藤に声をかける。
「藤ちゃんと征ちゃんって、よく一緒にいる様にみえてあんまり会話はないのね」
「……考えたことなかったです」
「あら、藤ちゃんってアシストとっても上手なのに、実は自分のことには疎くなるタイプ?」
さあ、自分のことなのでよく、と藤は口にし、まだ仕事が残っているからと部室を後にした。
「…はぐらかされた感があるわ」
「じゃあ、そういうことじゃないのー?玲央姉」
部室のパイプいすに座り、漫画を読んでいた小太郎は玲央に言葉を返す。
「うっるさいわね、アンタは黙ってなさい!」
「逆ギレ?こわっ」
さして気にした様子もなく小太郎は言い、口笛を吹きだす。
「おつかれさん」
永吉はそれだけを残し帰っていく。
「アイツはアイツで鼻からなあんにも聞いていないんだから…」
まともなのは私だけね、と玲央は息をついてみせる。それをみて、小太郎はまた余計なことを言うのだった。
「玲央姉も、案外まともじゃないと思うけど」


洛山高校バスケ部。来てみて、藤は分かったことがある。ここでは、息がしにくいこと。バスケに大切な何かが、あるようでないこと。青春という二文字はなく、ただ依然と絶対が居座っている事実。それはどこか、帝光中学校を思い出されて、『あの時』と反映して。
「……」
それでも藤は、ここでマネージャーをやろうと決めたのだ。撤回などするつもりはない。
「あ、小暮くーん!」
後ろから呼び声がし、藤は振り返る。同じマネージャーの、女生徒だ。やはり男のマネージャーは珍しいらしく、最初そう明かしたときも体育館はざわめきに包まれていた。それでも今は、順応できていたし、前からバスケをしていたものは、そのことに何も疑いを示さなかった。
「この前は手伝ってくれて、ありがとー」
「…この前?」
「ほら、タオル運んでくれたでしょ?」
「ああ、あれか」
気にするな、と口にする藤に、そうもいかないよ、と女子は返す。
「小暮君って、前からそんななの?」
「…?」
「ああほら、さりげなく手伝ってくれるじゃん」
「マネージャーだし」
「そういうことじゃなくて」
なおも首を傾げる藤に、痺れをきらしたように女子は言う。
「みんなが面倒だっていうこと、何もいわずに引き受けてくれるじゃない」
「…そうやって、育てられたから」
応え、藤は視線を前に戻す。
「ふーん」
あいまいに納得した様子をみせ、女子も友人に呼ばれ、踵を返していってしまう。
「育てられ方」
藤は呟く。
「みんな違うものだ」
だとしたら、軌跡から外れたあの五人は。…六人目の影は。
藤は、視線を空へとおくる。
「ズレを育てたのは、」
才能(コンプレックス)か。

やめよう、と藤は首を横にふる。
所詮、他人のことなど理にかなわない。


作品名:一点の光 【思考の外】 作家名:涙*