報復の誕生日
今日はオレの誕生日。
毎年、某変態尉(誤字じゃないぞ!)からおかしな物を届けられる。しかも、それはアムロさん経由で…。
ワンコハロはクルーにも可愛がられているし、メンテナンスするのも楽しいから良いが、鉄下駄に鮭って何だよ!!
なので今年は、こっちから押しかけて今までの報復をしてやろうと、地球のコリアン系の人に教えてもらった物を作ってスイートウォーターにやってきた。
「カミーユ! よく来てくれたね〜。なかなか会えなかったから直接お礼も言えなくて、申し訳ないって思ってたんだ」
宇宙港に到着したジュピトリスから降りると、到着ロビーにはアムロさんが待っていてくれた。
「ご無沙汰してます。お元気そうで良かった。毎年心尽くしの品を貰ってばかりだったので、今日はそのお礼も兼ねて、こちらで誕生会をしようかと、材料持参で訪問しました」
差し出された両手を握り締めて言うと、嬉しそうに笑うアムロさんの後ろでどす黒いプレッシャーを吐き出す、大人げない最高権力者が、表面上は平静を装いながらアムロさんを引き離そうと細い肩を捕まえようとした。
オレは素早くアムロさんを引き寄せると、
「これなんですよ〜。地球圏のある地域の人から教えてもらった、これからの季節にピッタリな食材なんです。去年頂いたあの魚と同じ物を、俺が加工したんですよ」
と、ディパックの中を見せた。
アムロさんは興味津々でバックの中を覗き込み、慌てて一歩後退した。
「カミーユ〜。これ…すんごい匂い…してるんだけど……」
「ええ。医食同源の思考のもとに作られる食材なんで、いろいろ入ってますからね」
「カミーユ! アムロを困惑させるような品物を持ち込むんじゃない!」
「いや…。知ってはいるんだけどね…。実物を見たのは初めてなんだ。だから、びっくりしちゃって…。ごめんね? 失礼な態度だったよね」
「いえ。気にしてませんよ。でも、これを食べると芯から温まって元気になれるんだそうです。オレだけ元気になるのは心苦しいんで、総帥にも元気になって貰いたいなぁって思って…」
「シャアも?」
「私もかね!!」
二つの言葉は対照的だった。
片や、気を使ってくれている事を喜び、片や、拒否したい気持ちが前面に出ている。
「はいっ!!」
オレは腹黒さなんてこれっぽちも無いと思わせる爽やかな笑顔をアムロさんに向けた。
「ありがとうねっ! 離れていてもシャアの事を気にかけてくれて!」
「い…いや…アムロ。それは、ちが…」
「手伝うね!!」
「お願いします!」
困惑におたおたする最高権力者をそっちのけにし、オレは純真無垢な天使を協力者に引きずり込み、報復の作戦を開始した。
オレが持参したのは鮭キムチ。
それを使って鍋と炒飯を完成させた。
当然、最高権力者の口にはいる物には、カプサイシン盛り沢山にしてやった。
「暖まるね〜」と頬を赤くして微笑む天使の横で、ひきつった笑みを返しながら冷や汗をだらだらと流している変態尉の姿に、オレはようやっと溜飲を下げたのだった。
因みに、アムロさんが「今日は麺の日でもあるんだって」と超長い麺を持ってきてくれたので、それを鍋のシメに投入して美味しく食べる事が出来たのが、オレにとっては何より嬉しい誕生日プレゼントになった。
2013.11.1