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Wizard//Magica Infinity −9− 完

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あれから、世界は改変された。
全ては彼女、鹿目まどかの仕業だ。

魔法少女が絶望して魔女になるという概念は改変され、魔女になる前に消滅、円環の理へと導かれるルールになった。


だけど、この世界から魔女という存在が消えても、驚異が無くなった訳ではない。


この世界には、魔獣が誕生した。


そして私達、魔法少女は、魔獣の驚異から逃れることができない一般市民を人知れず戦う英雄になった。


「私は、結局…何をしてあげられたのかしら」
「ん~?どうした、ほむら」


街中の喫茶店で私は佐倉杏子とお茶をしている。
季節は既に秋。
秋はいつ以来だろうか。

ずっと繰り返される初夏を過ごしてきた私にとって、秋とは本当に久しぶりだった。体調管理に気をつけないと。


「今はすっかり秋だな~落ち葉がよく目につく」

「えぇ。あなたもいい加減、寝るときぐらいはちゃんと布団を引くことね。今までみたいにお腹をだして寝ていると風邪引くわよ?」
「ば、馬鹿!!でっかい声でそんな事言うなよ!!」

赤面になる佐倉杏子とは対称に私は微動だにせずショートケーキを口に運ぶ。
今日は私達の巡回番だ。


「さぁ、そろそろ見回りに行くわよ」
「えぇ~あともう一つ頼ませてくれよ!このレアチーズケーキ食べたいんだよ!!」
「勘定は?」
「うっ…すいません、お願いします」


私は店員さんにお代を渡し店を出る。佐倉杏子は名残惜しそうだったがこれ以上彼女に付き合っていると私の身がもたない。
この時ばかりは操真ハルトの苦労が身にしみた…。


あ…。


「佐倉杏子」

「なんだぁ~ほむら」

「あなた…『操真ハルト』という名前に聞き覚えはある?」

「あぁ?いや、聞いたこともないなぁ、誰だそれ?」


…やはり、鹿目まどか と同時に 操真ハルト という存在事態、皆の記憶上から抹消されていた。
いや、正確には最初から存在しなかったことになっているみたい。


「いえ、知らないのであればそれで良いわ」
「あっ、わかったぞ!もしかして ほむらの−−−」
「それは絶対、断じて違うわ」
「あ、そう…」

空を見上げる。
この世界を守った彼女の名前は、誰にも知られることなく、誰の記憶上に残らない小さな英雄として今もこの空のどこかで私達を見守ってくれている。

そしてもう一人。

かつて、魔法少女達の絶望を受け入れ、人間へと戻してきた影の英雄が存在したということも、誰も知らない。


それでも、この地球上で二人の存在を知っている人物が一人だけいる。


私だ。


私は絶対に忘れない。あの戦いを。

私の記憶がある限り、彼と彼女は存在し続ける。

そして私はこれからも戦い続ける。



いつかまた会える…未来へと辿り着く為に。





−−−だけど、そんな彼女は彼が生きていたという記憶を残すために一つだけ、そうたった一つだけこの世界にいたずらをした。
とても小さな、可愛いいたずらだ。


「なんだぁ~あそこの店の前、やたらと子供たちが集まっているな」

商店街のショーケース越しに映っていたテレビ番組を子供たちは何か騒ぎながら見ていた。私と佐倉杏子は後ろからそのテレビの映像を覗いてみる。
すると、そこには−−−。


「ふふっ!」
「な、なんだぁほむら!お前、今笑ったのか!?」


思わず笑ってしまった。
だって、そのテレビに映っていたのは…