ぐしゃぐしゃ
「なぁなぁ、頼むよ」
「しつこい」
あーあ、可愛い女の子かそれとも、せめて大切な大切な幼馴染が相手なら考えるのになぁ。あ、別に俺にその気があるわけじゃなくて、あの幼馴染にはそのくらいしてやらないと杏里とは引っ付かないよなぁ、というだけだ。ていうかアイツは何だ。あれ、男としてのDNAに挑戦してるだろ。
「女の子くどくみたいに俺をくどいてよ!!」
「意味わかんねーよ!!」
「ハニー達を飽きさせたくないんだって。ここらで新しい技術身に付けないと」
大して年も変わらないくせに、こいつの身長は俺より十センチ以上高い。腹立つ。ナンパを断られる時の常套句。私、小さい男に興味ないのよねー。
「なぁなぁ、いいだろ? 一時の気持ち悪さには目をつぶって。ほらほら、お互いの技術向上のためにも」
「ああもう!」
めんどくさい。気をそらすために目を落としていた携帯に、男のごつい指がかけられる。六条はそのまま俺から携帯を取り上げた。もういい、そこで俺は思考を投げた。
六条の体を掴んで、無理矢理今まで俺が座っていた椅子に座らせる。顔を掴んで自分の方に向かせる。自分の顔を意識して変える。今までの経験で、どんな顔をすれば自分の幼い顔立ちが映えるかということは知っている。
「・・・俺と一緒に来るか?」
「・・・・・・っ」
どこに、とはあえて言わない。目的語を曖昧にすれば相手は想像力を働かせる。それは大抵の場合、本人の最も望む場所なのだ。
「なぁ、どうする?」
声変わりも大体終わったので、自分の声を低くしようと思えば低くなる。低くかすれた声。その声が好きだ、という女は多かった。
「と、まぁこんなもんか?」
「・・・・・・・」
「おい、どうした?」
「正臣のテクニシャン・・・」
「は・・・?」
後に残ったのは顔を赤くした六条だけだった。