弁慶の手紙
嫌な予感しかしない。吐き気がする。
「さすがにトラックには勝てないよな。潰れちまったってさ。」
頭が真っ白になった。
「弁慶!この鉄骨運んでくれたら、今度の試合全部ストレートで勝負してやるよ!」
「それじゃあ全部ホームランだ。」
「…おい、なめてんじゃねぇよ。」
「よし、わかった、運んでやろう。」
弁慶が鉄骨を持ち上げた。
(もん太、チェンジアップで三振だ!)
(優勝だぞ、もん太!)
(ゆ、優勝…)
「さぁ、もん太!!全力でこい!!」
「べ、弁慶…」
「すまん、もん太。打たなかった俺が悪いんだ。」
弁慶のベンチへ帰っていく背中は、とても寂しそうに見えた。
それから弁慶は職場に来なくなった。
「う、嘘…。弁慶が、もう…いない?」
何も考えられない。死ぬほど苦しい心臓が、大きな音を立てて鼓動する。
今まで一緒に仕事をして、野球やって、楽しく過ごせてたのに。
こんな形で終わるなんて。
気付いたら、目の前に居たやつを殴っていた。
12月25日
寺で修行してた俺に、一通の手紙が届いた。
時空メールだった。
差出人は、
「べ、弁慶……っ」
俺はすぐに封を開けて、手紙を読んだ。
《もん太へ
もん太、メリークリスマス。
俺がなんで時空メールを出したかというと、お前に伝えたいことがあるからだ。
口で言えば済む話なのだが、少し気恥ずかしくなってしまってなかなか言えなかったんだ。
俺はもん太がずっと好きだった。
ただの友達じゃなく、もっと深い関係になれたらいいと思っている。
じゃあ、返事を心待ちにしているぞ。
手紙なんか卑怯だと思うが、許してくれ。
これが、俺の精一杯だ。
弁慶》
「…ばか………………何を、今更……………っ」
涙が溢れてくる。泣くのなんて柄じゃない。
でも、
「な、涙がッ…とま、んねぇ……っ!!」
もし、弁慶が俺の前にまた現れたら、
今度は絶対に言おう。
弁慶……………
「………………………………………………………好きだよ……。」