ある日ある場所で
リヒの隣に座っていたルートヴィッヒは、俯きながら呟いた。
彼は体格こそ周囲にムキムキ、ごつい、でかいと評されていたが、その反面末っ子体質や甘いもの、可愛いものが好きであることも親しい者は(本人には直接は言わないものの)知っていた。
その180cmの大男が、二周り近く小さいのに姉のような存在の少女に、好意を抱き、言葉に出すために何冊のマニュアル本がボロボロになったか、は彼の兄のみが知っていることだった。
「すまない、あの、嘘でも良い。本当は嘘はつらいがそれでもいい、俺のことを、その、好きと言ってくれないだろう、か…?」
色白の頬をほんの少し紅潮させ、リヒの様子を伺いながらそう言ったルートヴィッヒの横。ならんで座っているのに、なんだか距離を感じるのは何故なのだろう。
「私は、好きとかそうじゃないとかで、嘘はつきたくないですわ。」
彼女の声で『好き』なんて単語が発せられるだけで、ルートヴィッヒの心臓は今にも止まりそうな勢いなのだが、それ以上に、思いを否定されてしまうことが怖く思えた。
「私は、本当に、嘘ではなく、お慕い申し上げているのですよ、ルッツ?」
その言葉に、夢にまでみたその、言葉に。
「その、これではいけませんでしたか?」
小首を傾げるそのかわいらしい仕草ごと、自分のものにしたくて。
ついでに言うと今にも泣き出しそうな自分の顔が恥ずかしいので隠してしまいたくて。
小さなその身体を引き寄せて、そっと抱き締めたのだった。